02.モンテーニュはエセーにて語る
コロネロに用意されたのは、アドリア海が一望できる、そこそこの広さの部屋だった。絨毯の上でくるりと童女が回転し、少年に向けて両手を広げる。
「ここが、おまえのへや。ほしいものはヴィットーレにいって。てきとうだったらよういさせるわ」
「・・・・・・テメーの部屋はどこなんだ、コラ」
「このかいのいちばんおくよ。ヴィットーレのへやがおまえのむかい。あとはそうね、どうだったかしら。じぶんでまわっておぼえてちょうだい」
童女は自分の部屋と違うのか、ドアというドアを片っ端から開けていく。その様は本当に、ただの幼い子供にしか見えない。自分が膝をつくような、そんな相手には思えなかった。出会って、そう、この心を覗かれるまでは。
「ラガツァはちいさなファミリーだから、しごとはそんなにいっぱいないの。おまえはすきにあそべばいいわ」
「俺はテメーに仕えるために来た。テメーの傍にいなきゃ始まらねぇ」
「そうね、そう、じゃあヴィットーレにきいて。ひつようなことはあのこがぜんぶ、おぼえてしってるはずだから」
軽い足取りで部屋を横断し、童女はスカートを翻して扉へと戻る。その小さな後ろ姿に、コロネロは思わず問いかけていた。
「あいつ、テメーの何なんだコラ」
「ヴィットーレはのもちもの。それいじょうでもいかでもないわ」
そしておまえも、のもちもの。そう続けられた高い声に、コロネロは知らず暗い喜びを覚えていた。
それが意味するものに、彼自身まだ気づいてなかったけれども。
おまえがおまえであり、俺が俺だったから、だから。
2006年7月30日