01.D.O.C.G.
ラガツァファミリーの本拠地から帰ってきた骸は、それはそれは上機嫌だった。剥き出しのワインボトルをデスクにどんと乗せ、満面の笑みで帰還を告げる。
「ただ今帰りましたよ、綱吉君。お土産のリミニ産ワインです」
「ありがとう、骸。お留守番ご苦労様」
「退屈な仕事でしたよ。ラガツァの屋敷でアドリア海を肴にワインを飲んでいるだけで良いんですから。暇すぎて感覚が鈍るかと心配になってしまいました」
「・・・・・・すげーうらやましい。いいなぁ、そんなバカンス」
「おや。その書類をすべて片せば、君もゆっくり出来るのでは?」
「まさか。これが終わっても続々と仕事は来るよ。アドリア海なんていつ以来拝んでないか」
決済の済んだ書類をまとめ、綱吉はうんざりと肩をすくめる。骸はクフフと笑い、応接用のソファーに腰を下した。足を組む彼は気味が悪いほどにご機嫌で、綱吉は怪しみながらも尋ねないわけにはいかない。
「それで、どうだった? ラガツァは」
「デートのお誘いを頂きましたよ。ドン・ラガツァも僕に興味を持って下さっているらしく」
「おーい・・・・・・頼むからあの子と組んで裏切ったりしないでくれよー・・・?」
「さぁ? 世の中何があるか分かりませんから」
クフフ、と骸は笑う。前科があるだけに内心でひやりとしながら、綱吉はペンを置いてデスクを立った。部屋に備え付けの小さなダッシュボードからグラスを取り出し、骸の正面へと移動する。
「リミニのワインは本当に美味しいよな。約束通り毎月送ってきてくれるけど、いつもすぐに飲み切っちゃうし」
「アルコバレーノは一滴も口にしようとはしませんけどね。意外に可愛いところもあるじゃないですか」
「それ、リボーンの前では言うなよ。やっと落ち着いてきてるのに」
「あぁ、そういえばアルコバレーノで思い出しました。ドン・ラガツァ、手に入れたみたいですよ」
「何を?」
ナイフで器用に栓を抜き、手ずから骸と自分にワインを注ぐ。首を傾げた己のボスに、骸は最上級の笑顔を向けた。
「もちろん、アルコバレーノです」
告げられた事実に、ワインの味も忘れる。
2006年7月30日