04.青色の観覧車





マフィアランドはラガツァの貸切だった。300人の男たちが童心に返り、海や遊園地を思う存分満喫している。チェックのキュロットにセーラーという格好で、童女もジェットコースターに歓声を上げた。
「ねぇ、ヴィットーレ! きにいったわ、あのアルコバレーノ!」
小さな歩幅で踊るように走りながら、童女は次のメリーゴーランドを目指す。
「おまえもみたでしょ、ないたのよ、あれ。ボンゴレのとはけいろがちがうわ。カルカッサともちがうみたい」
「そうですね。軍隊育ち故に他ほど摺れてはいないのかもしれません」
「あのきらきらのかみはたいようのいろ、ふかいあおはしんかいのいろ。おまえとはにているけどちがうわね。おまえはつきで、そらだもの」
「もったいないお言葉です」
「きにいったわ、あのアルコバレーノ」
たくさんの馬の中から気に入ったのを選び出す。これ、と指さした童女を抱き上げ、ヴィットーレは彼女を馬上の人とした。音楽に合わせて回り出すと、己のドンに気づいたファミリーたちが、外から手を振ってくる。
「あれ、なまえはなんていったのかしら」
「コロネロとのことです」
「そう、コロネロ。コロネロ、コロネロ」
舌の上で遊ばせて、何度もその響きを確かめている。言葉に違わず気に入ったのだろう。童女の横顔は新しいおもちゃを見つけたかのように輝いている。
「コロネロ、うん、おぼえたわ。あれ、もってかえりましょう」
「部屋を一つ用意する必要がありますね」
「そうね、まかせるわ、ヴィットーレ」
「かしこまりました、ドン・ラガツァ。しかしそう致しますと裏マフィアランドの管理人がいなくなってしまいますが・・・・・・」
「いいのよ、そんなの、ほおっておけば」
回転を終えた馬から飛び降り、童女は日差しの下へと駆けていく。

「アルコバレーノはマフィアのいみご。だったらがもらっても、なんらもんだいはないはずよ」

つぎはあれにのりたいわ。そう言って指さされた先には、巨大な観覧車が青空にそびえ立っていた。見上げればまぶしい日差しに目を奪われる。きっと天国に一番近い場所に違いないと、ヴィットーレは思った。きっとあのアルコバレーノも堕ちるだろうと、彼は思った。





眩しさに眩暈を覚える。視力を奪うのは光も闇も同じだ。
2006年7月29日