02.さぁ、野原に行こう
数多ある同盟ファミリーの中で、ドン・ボンゴレが最も信頼をおいているのはキャバッローネに他ならない。キャバッローネをまとめているディーノは綱吉にとって兄弟子にあたり、10年以上前から親しくしてきた存在だ。故に今回のリーヌファミリーとの抗争についても、綱吉はまずキャバッローネに意見を仰いだ。年齢からいえば30代に入っただろうディーノは、相変わらずの甘いマスクで真剣に言葉を選ぶ。
「リーヌファミリーはやりすぎた。麻薬に児童売春、臓器売買、他にも挙げたらきりがねぇ。潰すべきだとは思うが、何せ奴らは武器を山ほど仕入れてるらしいからな。慎重に行くべきだぜ、ツナ」
「いざ抗争になったら勝算はあるんです。ラガツァファミリーが力を貸してくれます」
「ラガツァ!?」
ここで名が出てくるとは思わなかったのだろう。身を乗り出した兄弟子に、綱吉は苦笑する。
「この前、正式に同盟を組んだんです。あくまでボンゴレとラガツァの一対一でなんですけど」
「・・・・・・すげーな、ツナ。そりゃ百人力だ」
どさっとソファーに背中を預け、ディーノは感心したように数度頷く。綱吉より長くこの世界にいる分、ディーノはよりラガツァファミリーの武力を知っている。実際に彼らの戦いも目にしたことがある。圧倒的とも言える力は、今まで自分たちのためにしか振るってこなかったはずなのに。
「どうやってドン・ラガツァを懐かせたんだ? 確かリボーンと同じ年くらいのボスだろう?」
「リボーンよりも年下ですよ。ドン・ラガツァは七歳です。だけどリボーンより厄介かも」
「マジ? それは末恐ろしいボスだなぁ」
「加えて言えば、ドン・ラガツァとリボーンは相性が悪いです。特にリボーンの方が弱いんで、俺としては出来るだけ彼女に近づけさせたくなかったんですけど」
綱吉もディーノも、生徒としてリボーンの強さはよく知っている。けれどそんな彼でさえ、ドン・ラガツァの毒は蝕んだ。リボーンだからこそ、とも言えるかもしれないが。
「ドン・ラガツァは言葉に毒を含ませます。年なんて関係ない、はっきり言って特異な子供です。骸がものすごく気に入るくらいに」
「・・・・・・そりゃ、とんでもねぇな」
「そうなんですよ。だけど、だからこそ敵に回したくなくて」
「同盟を組んだってわけか」
はい、と頷いた綱吉の気持ちはディーノも分かる。ラガツァは構成員こそ少ないが、その実力は一騎当千。正面からぶちあたればキャバッローネとてどうなるかは分からない。今まではラガツァが本拠から出てこなかったから良かったものの、ボンゴレと同盟を組んだことなどを考えれば、今後どうなるかは推測できない。
それを考えれば、今回はいい機会だ。実際にラガツァの戦いを目の前で見ることが出来、ドン・ラガツァとも繋がりを持てるかもしれない。ディーノはそう考え、綱吉の肩を軽く叩く。
「心配すんなよ、ツナ。キャバッローネも全面的にバックアップするから」
「ありがとうございます、ディーノさん」
「こうなったらとことん、リーヌファミリーを潰しちまおうぜ」
安心させるように笑いかければ、綱吉も肩の力を抜いて笑った。その顔は中学生時代の、初めて会った頃を思い返させて少しだけ切なくなるけれど。それでも今は対等な立場として、互いに背中を預けあっている。
リーヌファミリーとの抗争は、すぐそこまで来ていた。
僕らはもう、昔のように笑い合えない。好きだという気持ちは変わらないのに。
2006年7月26日