03.呑みこまれた心臓
互いのボスがいなくなり、控えの間には沈黙が訪れる。山本は少し首を傾げていたが、結局はにかっと笑って金髪の男―――ヴィットーレに席を勧めた。
「まぁ、話もすぐには終わらないだろうしな。おまえも座れよ」
「ありがとうございます」
「俺は山本武っつーんだ。おまえは?」
「ヴィットーレと申します。ファミリーでは僭越ながらドン・ラガツァのお世話役を務めさせて頂いております」
「見たところ、俺らとあんまり年、変わらないよな?」
「今年で27になります」
告げられた年は山本よりも二つ上だった。柔らかい金髪と穏やかな顔立ちがそうさせるのか、ヴィットーレはあまり年齢を感じさせない。
「あんたたちのボスは今年で何歳になるんだ?」
「ドン・ラガツァは御年七歳におなりです」
「七歳!」
同じく控えていたランボが、思わずといったように叫び、慌てて口を抑える。この場にいる守護者は彼ら二人と雲雀のみで、了平と骸、そしてリボーンは外の警護に当たっていた。
ランボの様子にヴィットーレはにこりと笑いかける。
「お若いとお思いでしょう?」
「えっ! いや、まぁ、その・・・・・・」
「実際にお若いのです、私たちのボスは。学校に入学される前に12代目を襲名されたので、余計に幼く見えるのでしょう」
「そんな子供に何故、武闘派集団のラガツァが従ってるわけ? まさかあの子供も赤ん坊みたいに強いとでも言うの?」
雲雀の言う「赤ん坊」が誰だか分からずヴィットーレは眉を顰めたが、山本の「リボーンのことだ」という注釈に、あぁ、と納得する。
「いいえ。ドン・ラガツァは何一つ武芸を身につけてはおりません」
「だったら何で従ってるの? 特に君、まるで下僕みたいじゃない。それだけする価値があの子供にあるの?」
「おい、雲雀」
山本が諌めようとしたが、ヴィットーレは不快に受け取ることなく穏やかな微笑を浮かべたまま、雲雀の視線を見返した。
「愛しているからでは、いけませんか?」
「・・・・・・ラガツァ全員が、マゾの上にロリコン?」
「他の者は、純粋にドン・ラガツァに心酔しています。ですが僕がドン・ラガツァにお仕えしているのは、あの方を愛しているからです」
「20も年下の子供を?」
「ええ」
恥じることなく肯定したヴィットーレは、同性の山本たちの目から見てもよい男だった。優しげな彼の雰囲気を好む女性は多いだろう。けれどそんな彼の愛は、20も年下の童女に捧げられていると言う。しかも先ほどの会話を聞く限りでは、どこか狂っていると思われても仕方のない童女に。
「あの方のためでしたら、僕は命すら投げ出してみせるでしょう」
告げられた言葉は真摯で、ヴィットーレの本気を感じさせた。慈しみに溢れたまなざしが注がれる扉の向こうに、彼の愛しい主は存在する。
あなたが望んで下さるのなら、この身などいくらでも差し出しましょう。
2006年7月24日