04.天使の笑顔
向けられた拳銃に、童女は笑う。それはまるで人形のように、天使のように愛らしい微笑。己より幼く、ここまでマフィアに浸透している人間を、リボーンは初めて目の当たりにした。銃の安全装置は外してある。いつでも引き金を引ける。いつでも目の前の童女に死を齎すことが出来る。それなのにどうして笑うのか、理由が分からず眉を顰めた。
「はじめまして、さいきょうのヒットマン、リボーン。おあいできてうれしいわ」
「何をしに来た、ドン・ラガツァ。ボンゴレに何の用だ」
「ドン・ボンゴレにおあいしたくてきたのだけれど、とりついではもらえない?」
「アポイントもなく、他所のボスと会わせられるか。しかもテメーみてぇな胡散臭いファミリーとなんか」
「しつれいね。しつれいなはなしだわ。ラガツァのどこがうさんくさいの。あなたのしゅっせいほどうさんくさくはないはずよ」
「言うじゃねぇか、クソガキ」
「ヴィットーレ」
どう見ても子供の容姿。それ以上に拙い喋り。それなのに纏う雰囲気は得体が知れず、不気味な気配を漂わせている。部下に渡された大きな花束を、童女はリボーンに向けて差し出した。
「これをドン・ボンゴレに。おたんじょうびおめでとうございますのことばをそえて」
悪趣味なほどに赤い薔薇。匂い立ち過ぎるそれにリボーンは眉を顰める。
「できればらいねんは、どうめいファミリーとしていっしょにおいわいしたいわ、と」
「・・・・・・笑えねぇ冗談だな」
「なんとでもいいなさい、アルコバレーノ」
童女は笑った。その笑みは天使のように純粋なのに、その皮の下の闇を感じさせて堪らない。リボーンは銃を握る手に力を込めた。童女の後ろで、男が僅かに身構える。突きつけられている銃口に、童女は背伸びをしてキスをした。まるで魔女が呪いをかけるような、そんな祝福のキスだった。
リボーン13歳。
2006年7月21日