彼女の恋人が衝撃を受けた話





「フク! 新開! 荒北! 俺はちゃらいのか!? 俺はちゃらく見えるのか!?」
トレーニングルームの扉を蹴破る勢いで飛び込んできたのは、部室で愛しの恋人との定期メールを交わしていたはずの東堂だ。練習が始まるまではまだ時間があるため、文句を言う輩はいない。けれども喧騒を巻き散らかされては、思わず眉を顰めてしまうものだ。なので荒北は苛立ちのままストレートに答えた。
「ちゃらいに決まってんだろォ? おまえ、自分が真面目チャンだとでも思ってるわけ?」
「そうだな、ちゃらいかちゃらくないかの二択なら、ちゃらいに分類されるかもな」
「言動はともかく、制服の着こなしには問題があるだろう。風紀委員のチェックにも引っかかったことがあるはずだが」
望んだ否定ではなく、よもやまさかの肯定を返されて、東堂は思わずその場に膝を着きそうになった。確かに福富の言う通り、制服の着こなしは真面目とは言えないかもしれない。ティーシャツの上から着ているワイシャツは全開だし、スラックスはやや腰履きでベルトも派手なものが多い。ネックレスは外すことの方が少ないし、カチューシャは気に入りなので日替わりでいろんな色のものを付けている。ピアスこそ開けていないし、タトゥーこそしていないものの、自分に似合うファッションを身に纏うことを是としている東堂は、確かに真面目とは程遠いのかもしれない。けれどちゃらいと言われたら、反論したくもなってしまう。だって東堂は授業をさぼったことがないし、試験だってそれなりに上位の成績を収めている。部活動は言わずもがなで、対人関係は分け隔てなく、いじめなんてもっての外だ。実家に帰れば家業の手伝いだってするし、不甲斐無いのは恋人と会う時間を余り作ることが出来ないくらいかと思っていたのに。
は・・・ちゃらい男は嫌いだろうか・・・!」
がっくりと今度こそ項垂れた東堂に、あほくせ、と荒北が吐き捨てた。そう言ってやるなよ、と苦笑するのは新開で、黙々と部活の支度を始めるのは福富だ。しくしくと顔を覆って泣き始めた東堂に、真波が笑顔で止めを刺した。
「確かに東堂さんの彼女さんって清楚系だし、ちゃらい東堂さんとは釣り合わないかもしれませんね」
まぁ俺よく分かりませんけど、と真波は笑うが、東堂が一層騒ぎ立てるには十分過ぎて、うるせェ、と荒北が怒鳴り付けるのはそれから一分も経たない後のことだった。しかし夜のメールで恋人から「私はそのままの尽八君が好きだよ」と告げられて一転してご機嫌になった東堂は、うっぜ、と再び荒北に殴られるのだが、それはまだ少し未来の話である。





ちゃらいのが悪いわけではないが、少し意外だったんだ。
2014年4月20日