彼女と彼女の恋人の人となりの話
「の彼氏はどういう人なんだ?」
手持ちの恋愛話がない代わりに、小テストの山当てや購買の新作メニューの情報を流すことで話を聞く権利を得た柳は、今日も今日とて隣席の少女に話しかける。二時間目と三時間目の少し長い休み時間、は机にフェルティング用マットを広げ、その上で羊毛を専用ニードルでちくちくと刺していた。これを繰り返していくと美味しそうなケーキや可愛らしい動物などが出来上がるのだから不思議なものだと柳は思う。前の席では相変わらずアデルがビーズを連ねており、彼女はシロツメクサとパンジーとクローバーを組み合わせた花冠のストラップを作成しているらしい。柳はテニス部でよくそんなショットが打てるなと言われるが、彼にしてみれば家庭科部のやアデルの方が不思議だ。よくもこんな細かいものを美しく創り上げるものだと感心してしまう。ちくちくちくちくと、フルーツタルトに載せる苺を形作りながらは首を傾げる。
「どういう人って言うと?」
「一言で纏めると、どういった人物なんだ?」
「そうだね・・・。よく喋るよ。お喋り、かな」
「ほう、それは意外だな」
「話すのが好きで、基本的にテンションが高い人なの。だから時々友達に『うざい!』って言われて、『うざくはないな!』って胸を張って言い返すような人」
はまた、柳が好む可憐な表情で笑った。この顔を見るのが好きで、自分は彼女に恋人の話を振っているのかもしれないと柳は思う。しかし、一方で意外だった。年上と聞いていたから何となく大人びた男を想像していたのだが、どうやら違うらしい。
「が落ち着いているのは恋人の影響かと思ったんだが、違うのか」
「うーん、どうだろう。もちろんお喋りなだけの人ではないよ? 凄く気配りが出来て、理知的な人。でも打算とか計算とか、そういうのとは無縁かな」
「そうか。俺とは違うタイプだな」
「そうかもね」
「容姿についてはどうだ? は顔で選ぶタイプの人間ではないだろうが」
興味本位で尋ねれば、うーん、とは再び首を傾げた。その間もちくちくと手はニードルを動かし、苺を見事に作成している。
「どう思う? アデル」
「黙ってればイケメン。十人中八人はイケメンだと判断するでしょ」
「それは凄いな。是非とも写真を見てみたいんだが」
「それは駄目。恥ずかしいから、また今度ね」
頬を染めてが笑った。照れ隠しなのか、羊毛フェルトを刺す手が速まっている。残念だ、と柳も笑った。友人の恋バナを聞くのは、案外悪くない。
テンションが高く理知的な美形。立海にはいないタイプだな。
2014年4月20日