我が同志よ
「向こうに入らんかーっ!」
叫びがボールを後押ししたわけではあるまいに、それでも気迫が勝ったのだろう。ボールはゆっくりと真田ではなく、手塚のコートへと落ちていった。少しだけバウンドして、審判が真田の勝利をコールする。仰向けで空を仰ぎながら、真田は汗だくで勝利を噛み締めた。ずっと再戦を望んでいた相手だ。最初から最後まで真っ向勝負を挑み、そして勝つことが出来た。強く拳を握る。歓喜だけが真田の身体を埋め尽くしていた。
健闘を称える握手を交わし、真田は自然と笑った。対する手塚も、敗れはしたけれども全力を出し尽くしたという自負があったのだろう。次は負けない、ときつく握られる手が心地良く、受けて立つ、と言葉を返して真田はコートを出た。立海に記された先勝。湧き上がるベンチ。拍手を送る観衆。その中、最上段の遠い位置に、ぽつんと白い影がある。どんな表情をしているのかは分からない。それでも真田には、影が仁王であるという確信があった。だからこそ帽子を脱ぎ、彼は彼女へと向けて深く頭を下げた。仁王が見せてくれた「手塚国光」が、真田に勝利をもたらしたのではない。それでも、彼女なしで得られた勝利ではなかったと思う。だからこその礼儀だ。
顔を上げ、帽子を被る。やはり顔は見えなかったけれども、仁王は笑っているんじゃないかと何故か真田には思えた。仲間の待つベンチへと向かう。そこに仁王がいないのが、真田にはやけに不思議で仕方がなかった。
幸村様の「真っ向勝負を捨てろ」という命令はなく、全力で最初から最後まで真っ向勝負をした真田皇帝。。
2011年1月16日