伸ばした手に、三本の傷。
それを舐める舌。



翻して逃げる獣。





Love me, I love you!(side Keigo Atobe)





向日には勿体無い女だと思う。
強すぎる眼差しはどう考えたってアイツには受け止めきれない。
だがそれもきっと計算の内。
甘い女じゃない。
生半可な対応は逆効果。
向日は日が経つにつれ落ちていく。



の眼に、囚われていく。



最初は戸惑い。
そして浮かぶ疑問。
気になりだしたら止まらない。
募っていく焦り。
捕らわれていく感覚。
の笑い声が聞こえそうだ。
向日はもう、完全にヤツの手の中。



勿体無いと、思う自分がいる。



日吉は無表情な顔の中で、それでも確かに何かを認め。
忍足は時折ひどく楽しそうに笑みを漏らす。
ジローはまるで猫のように丸くなって手を伸ばし。
鳳はじっと静かに見つめている。
宍戸は実に満足そうに、声を出して笑っていて。
それらすべてを掻き集めて、は立っている。
あの、鋭く強い眼を閉ざさずに。



どうしよう、と向日が言う。
今にも泣きそうな顔で向日が言う。
俺、どうかしちゃったのかもしれない、と。
殴られた痕の消えた頬を押さえ、向日が言う。
どうしよう、跡部。



どうし、よう。



泣きそうな頭を一発殴って事実を教えてやるのは簡単だ。
だけどそれじゃつまらねぇ。
がせっかく仕掛けた罠。
落ちていくコイツを見てるのも悪くない。
何より落ちた向日を見たときのの表情が見たかった。



あの眼がどのようにして悦ぶのか、興味がある。



きっと綺麗に、眩しく、ひどく傲慢には哂うのだろう。
その笑みを見てみたい。
天使のように、悪魔のように笑って。
向日を喰らう瞬間を。



この眼で見てみたいと思うのだ。





2003年6月24日