一気に広まった噂と、それに振り回される向日。
逆に沈黙を続ける当事者のもう片方。
出会ったのは、本当に偶然。
足を下げてしまいそうになる目の強さに、息を呑んだ。
確認しなくても判る。



目の前にいるのは、間違いなく





Love me, I love you!(side Ryoh Shishido)





長太郎の言葉も、日吉の言葉も、学校中の噂も、全部間違っていなかった。
それどころかすべて正確に表していた。
目の前にいるコイツに対して。
に対して。
フェンスの向こう遠くで、誰かの声がする。
手の中で黄色いボールが転がった。



「早く練習に戻ったら?」
口の悪さは、聞いてた以上。
「おまえに関係ないだろ」
「そりゃね。まったくもって関係ない」
顔の造作よりもスタイルの良さよりも。
何よりも。
「だけどそこにいられると邪魔だから」
目の強さが、印象に残る。



遠くのコートで、向日の声がする。



姿小さく、顔さえも見えないような遠い場所で。
木の影に紛れるようにして。
声だけが聞こえる。
ボールを打ちかえす音がする。



目の前にがいる。



「・・・・・・・・・もっと近くで見ればいいんじゃねーの?」
「人の勝手」
「邪魔しなければ迷惑じゃねぇけど」
「アンタは向日じゃない」
「―――――――なぁ」
奇妙なくらいの確信があった。



「おまえ、向日のことすげぇ好きだろ」



語尾を上げる必要もない。
こんなに遠い場所から見ているくらい。
邪魔にならないようにしているくらい。
思わず笑みが浮かんで。
目の前の相手も酷く楽しそうに笑ってみせた。



「悪い?」



ちっともそうは思ってない眼をしておいてよく言うぜ。
あぁ、まったく。



「おまえ、最高」



どうしようもなく向日は幸せ者だと思った。





2003年6月24日