5.ブルーの涙





試験とやらは、毎日規則的に行われた。基本的な身体能力、一般常識から多種多様な分野のペーパーテスト、オリエンテーリングにサバイバル演習。情報を引き出す模擬交渉や、料理や掃除洗濯など日常の生活能力も試された。候補者同士の潰し合いも減ることが無く、試験の最中にも事故を装い、数は確かに減っていった。五日を過ぎると、人数はすでに20数名になっていた。
「ラルさん」
IQテストを終えて出てくると、隣の部屋からも女が出てきた。その洋服は不思議と毎日変化していて、ラルはその理由を尋ねたことがある。ここにいる候補者は全員が不意打ちを食らって意識を失わされ、そして連れてこられた者ばかりのはずなのに。女はにこりと笑みを浮かべ、管理者の方に頼んでいるんです、と答えた。毎日綺麗な格好をしていたいんですもの、とまるで普通の女のように。
「おまえ、まだ生きていたのか」
「まぁ、冷たいことを仰らないで下さいまし。ラルさんもお元気そうで何よりですわ」
隣に並び歩く背はラルよりも低い。ブラウスを押し上げている胸の膨らみやスカートから覗く足の柔らかさは女の理想的な形に近く、何故ここにいるのだろうと思わずにはいられない。何故ここでまだ生きているのだろうと、思わずにはいられない。それはおそらく守られているからだろうとラルは予測していた。女の武器を用いて、そこそこ腕の立つ男を取り込み、身体を差し出す代わりに命を守ってもらっているのだろう。でなければ女の生き残れている理由がない。
「ラルさん、ご存知でして? つい先ほど、タツゥオ・ペッタキがリカルド・ゼフと相打ちになったらしいですわ。これで残りは24名になりましたわね」
「リウッツィの死体も見たから23人だろう」
「まぁ、それでは、わたくしと同じ階の方は全員亡くなられてしまったのですね。寂しいですわ」
「まさかおまえが殺して回ったんじゃないだろうな?」
「とんでもない。わたくし、夜は与えられた部屋から一歩も出ておりませんもの」
女の言葉に、ラルは自分の推測に確信を強めた。男が通い、女を守っているのだろう。何故こんな人間がアルコバレーノの候補に選ばれたのか分からない。分からないが、アルコバレーノになる意志がないのなら気にすることもない。ラルはそう思い、女の他愛ない世間話に適当な相槌を打っていた。頭の中では、今夜殺す人間の顔を思い描いている。殺せば殺すだけ候補は減り、選抜される可能性は高くなる。
早く、早くあの青の傍へ。





待ってくれ。もうすぐ行ける。だからどうか、それまで。
2007年6月1日