「花火、買ってきちゃった。夜に公園でも行ってやらない?」
自宅の、彼女にとっては紛れもない自宅であるマンションのドアを開け、出迎えた限にコンビニの袋を渡して、雪村は笑った。パンプスを適当に脱ぎ捨て、ぱたぱたとリビングまで軽やかに進む。限がその後ろをついていくと、ダイニングから夕飯を作っていた藍緋が顔を出すのが見えた。
「おかえり、
「ただいまー藍緋。花火買ってきちゃった。後でやろ?」
「ああ、もうそんな季節なのか。どこでやるんだ?」
「そこらへんの公園でいいでしょ? 間違っても烏森なんか行きたくないし」
ふわりと茶色の髪を揺らして、が振り返る。その顔は限の知っているもう一人の「雪村」と良く似ているけれど、浮かべられる表情は別人であることをすぐに悟らせる。
「限は嫌い? 花火」
「・・・いや、やったことがない」
「そうなの? じゃあ一緒にやろう。限の初花火を貰っちゃったなんて、良守に言ったら『ずりーっ!』って言いそうだわ」
夜を迎えたというのに綺麗なルージュの唇を綻ばせ、楽しそうに笑うが限は不思議で仕方がない。雪村という結界師の一族でありながらも、いまや完全に妖となってしまった限と、そして藍緋を共に住まわせている。自身を含めた三人をを家族と言って憚らないが、限はとても不思議で面映かった。
「ほら、夕飯だ」
「やった、ビーフシチュー!」
三人分の食事が並ぶテーブルから、「げーん」と呼ばれる。藍緋の作ったビーフシチュー。限も玉葱を切るのを手伝った。味見をしてみろと言われ、少しざらつくと感想も述べた。これから花火に行くのだろう。血の繋がりなど無い、それこそ種すら違う自分たち三人を、は当然のように家族と言う。変な女だと、限は何度となく考えたことを繰り返した。
それでも三人でやる花火は美しいのだろうと、半ば確信を抱きながら。





な集





初出:2007年暑中お見舞い企画「カイダン」
2011年8月21日