幸福な朝を迎えて
目覚めは唐突だったのかもしれない。意識が浮上し自然と瞼を開こうとするが、ぱりぱりと固まっている睫毛が邪魔で少し痛い。擦ろうと手を伸ばそうとしても、腕の動く感覚がなかった。天井の白い蛍光灯が目に眩しい。思考は上手く働かない。霞みがかったように回転を止め、呼吸が浅く繰り返しているだけなのにやけに苦しい。ちら、と視界の隅で何かが動いたようだった。顔をそちらに向けようとしても、やはり首は動かない。仕方ないから視線だけを向ければ、そこにいたのは小さな少女だった。ようやく見えるようになった緑色の綺麗な瞳を、大きく大きく見開いている彼女を、影山は知っている。
「・・・、・・・」
ルシェ、と名を呼んだつもりだった。しかし唇は粘ついて僅かに開いただけで、漏れたのも音ではなく小さな息だった。それでも意図は伝わったのかもしれない。ぶわりと緑の瞳が涙を溢れさせ、ルシェは声を挙げて泣き始めた。それはもしかしたらとてつもなく大きな泣き声だったのかもしれないが、にはよく分からない。視界や喉がぼやけているように、聴覚も未だ役目を果たしてはくれないのだ。けれど聞きつけたのだろう。スライド式のドアを吹き飛ばすかの勢いで現れたのは、これまた見知った少年、ルカだった。白い髪に薄いそばかすが特徴的な彼は、滂沱しているルシェを見て、そしてベッドに視線をやって、やはり目を瞠る。はルカが「先生呼んでくる!」と駆け出していくのを見送るしかない。すぐに複数の医者と看護師がやってきて、病室は俄かに騒然となる。
事故から一週間、昏睡状態が続いていたんですよ。術後の、碌に身体を動かせないに、医者は微笑んだ。神があなたを生かそうとしているのかもしれませんね、と。
オルフェウスVSイナズマジャパン後、警察署の前で事故に遭った後からスタート。
2010年12月25日