恋の七日間戦争(感激する火曜日)
告白してちょうど一週間が経った。なんだか数えるのも空しいから今日で終わりにしようと思う。
だってもういい加減に待ちわびたし。
え? 待つのが短いって? だって青春なんて走馬灯のごとく過ぎていくものなんだから一分一秒でも無駄には出来ないよ。
しかもそれが望みのない恋愛のためならなおさらね!
破滅しかないと判っている道を誰が進むかっつーの。勇者ならまだ話は別だけど私はしがない一女子中学生(バスケ部所属)だしね。
無理なことはいたしません。というわけで伊武君のことは諦めます。
無意識で一年間、意識して七日の恋愛だったけど楽しかったよ。まぁここ最近は色々とムカついたりもしたけれど。
というわけでさ、君はもう用ナシなのです。どいでくれません?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・話があるんだけど」
そうですか、でも私には残念ながらございません。受付は昨日までだったので、どうぞタイムマシーンで戻られたらいかがですか?
「・・・・・・戻る気ないし。っていうかわざわざ君のこと下駄箱で待ってたんだから、その態度はないんじゃないの・・・・・・?」
だったら土曜日に思いっきり視線を逸らした君の態度は何だったわけ? もう裁判所で証言する?検察に任せてみる?
「・・・・・・任せないし。自分の言いたいことくらい自分で言える」
あっそ、じゃあさっさと言えば? 私はさくさくっと昇降口を通り抜けて教室に行きたいんだから。
だってあと10分で本鈴も鳴るし、今この時間帯の昇降口ってめちゃくちゃ混むから他所様の邪魔になるし。
っていうか言われることは何だか判ってるけどね。
あーもう長かったよ。これでやっと恋が終わるよ。晴れてバスケに打ち込める日々が続くよ。
また顧問に褒められそうだなぁ。まぁいっか、それくらいの特典がないと恋もやってらんないしね。
というわけでさっさと言っちゃって。それで私を教室に行かせて。杏と宿題の答え合わせする予定なんだから。
ここで時間を潰してるわけにはいかないんだよ。青春は走馬灯なんだから。
「好き」
あーハイハイ。わざわざ破産宣告、じゃなくって敗北宣言を下してくださってありがとうございました。
これで無事にバスケが出来ます。でもってしばらくしたら新しい恋が出来ますよ。
今度はもっとじっくり恋愛できるといいなぁ。やっぱ今回は速攻が悪かったのかなぁ。
「・・・・・・・・・人の話、聞いてないし・・・・・・・・・」
何を仰るウサギさん。ちゃんと聞いてましたよ。つまり君は私と付き合うきはないわけでしょう?
「・・・・・・・・・やっぱり聞いてないし。俺がいつそんなこと言った・・・・・・?」
ついさっき。言わなかったっけ?
「・・・・・・・・・言ってないけど」
・・・・・・・・・あれぇ?
たしかさっきは恋愛が速攻で、今度は弱火でじっくりで、新しい恋とバスケが出来るって思って、敗北宣言が破産宣告で、えっと、その前は?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ごめん、私これから耳鼻科に行ってくる。なんか幻聴とか聞こえるようになっちゃったし」
学校来て出席もとる前に早退っていうのもアレだけど、まぁ体調には変えられないから。
さーてと、行かなくちゃ。というか行かねばならんのでこの手を離してよ、伊武君。
「・・・・・・やっぱり聞いてないし。しかも一人で話して一人で納得してるし。本当に手に負えないよね・・・。まったく俺もどうかしてるんじゃないの・・・?」
いや、病院が必要なのは君じゃなくて私だから。移る前に離して?
そんなため息なんかつかないでさ、ほらさっさと。
「・・・・・・・・・もう一度、言うから。今度はちゃんと聞きなよ」
だから何を。
「俺はが好き。・・・・・・・・・・・・・・・・・・待たせて、ごめん」
視界が揺れた。
ボタボタって音がして、それでやっと気がついた。
あー私、泣いてる。何でだろ、昨日泣かないって決めたのに。それなのに、なんで。
止めてよ伊武君、触らないで。ますます止まらなくなるから、どうしようもなくなるから。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜遅いっ!」
「・・・・・・・・・ごめん」
「遅い遅い遅い遅いっ! もう諦めて次の恋愛しようと思ってたのに! それなのに何で今さら引き止めるわけ!? つーか遅すぎ! 一週間も何やってたのよ!?」
「・・・・・・・・・なんか、色々」
「何じゃそりゃっ!」
思いっきりパンチしてやった。
伊武君がグラリと揺れる。ざまぁみろ! 私の青春を一週間も無駄にさせた罰だ! ざまぁごらんあそばせ!
「・・・・・・・・・・そっちが悪いんじゃん」
はぁ!? 一体何を言い出すんだこの人は! 私のどこが悪いって!?
勝手に告白したところ? それとも一週間しか待てなかったところ? 話を聞いてなかったところ? に思い切りパンチしてやったところ?
一杯ありすぎてどれなんだか検討もつかないし!
一体私のどこがどう悪いのさ!?
「・・・・・・・・・俺は、次のクラス替えに賭けてたのに」
「それなのには勝手に告白してくるしさぁ・・・・・・まったく人の都合ってものを全然考えてないよね。思わず悔しくて『ちょっと待って』とか言っちゃったじゃん・・・・・・。しかも人の話も聞いてないし・・・。俺だって一年のときからのこと見てたのにさ・・・自分は杏ちゃんに言われるまで何にも気づかなかったんだって・・・? あー俺ってカワイソウ。机殴って満足するような女が彼女なんてね・・・。まぁいいけど、俺が選んだんだし。でも俺はテニス部だしはバスケ部でお互いに日曜も部活があるから大して出かけたり出来ないんだろうなぁ・・・。まぁそれは仕方ないけど。・・・・・・ってことは何・・・? ひょっとして今までとあんまり変わらなかったりするわけ・・・・・・? それじゃ恋人になった意味がないじゃん・・・。あ・・・判った、なるほどね・・・・・・。あー・・・ならいいかも」
何がいいんですか、伊武君。
つーか君こそ人のことは言えないよ。一人でブツブツ呟いてるし、まぁ聞こえてるからいいけどね。
というか、何? 伊武君って私のことが好きだったの? 知らなかった! 知らなかったよ、そんなこと!
それに『悔しくて「ちょっと待って」とか言っちゃった』って何さ!? すぐそこで頷いてくれれば良かったのに! そうすれば私の青春が一週間も無駄にはならなかったのに!
何なの君は! 考えてることが全っ然わかんないよ! でも好きなんだけどねっ!!
「・・・・・・・・・」
「何さっ!?」
「・・・・・・何でケンカ腰なわけ・・・?」
うるさいっ! これもすべて君に振り回されているんだから仕方ないじゃん! ・・・って、言おうとしたのに!
そ・れ・な・の・に〜〜〜〜〜!
重なった伊武君の唇に黙らされて、私は言葉を飲み込むしかなかった。
登校ラッシュで騒がしいはずの昇降口が一気に静まった中で、伊武君が満足そうに言った。
「・・・・・・これが出来るから恋人になった意味もあるってものだよね・・・・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
なんか、なんかなんかなんか、すごく柔らかいものが唇に触れたんですけど!
これは、何? やっぱり、アレなんですか・・・・・・・・・?
「・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
「・・・・・・・・・顔、赤いし」
「あ、赤くなんない伊武君のほうがどうかしてるっ!」
こんな衆人環視の中でキスされたら誰だって真っ赤になるって! 絶対、賭けてもいい!
「・・・・・・・・・可愛い、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
「意外と可愛かったんだ・・・・・・。一個、発見」
「だーっもう! 止め! その会話ストップ!」
恥ずかしいから止めっ! 一時停止どころか永久停止のボタンも押したのに! それなのになんでっ!?
「・・・・・・・・・、可愛い」
何でこの人はこんなことを言うんですか――――――――――――っ!!?
昇降口でバカみたいに言い合っている私と伊武君を見ていたギャラリーの中にいた杏と神尾君は後日こう言ってくれた。
『似たもの同士のカップルだから、絶対に上手くいくよ』、と。
そしてその後に『場所を考えてイチャつきなさい』とも言われた。
どういうことかと首を傾げたら、ダメだこりゃ、って感じでお手上げポーズまでされて。
うん、よく判んないけど、まぁとにかく。
「・・・・・・、帰るよ」
「うん、オッケー」
私と伊武君はめでたく恋人同士になれたのでした。
2003年5月6日