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ミルキは別にどうでもよかった。
兄のイルミが特定の誰かを傍に望むのは多少意外だったが、別にそれで自分に何かしらの害が及ぶわけでもない。
だったら別にどうでもいいや、というのが彼の本音だった。
そう、それに何より。
愛らしい幼女を自分の傍に置いて愛でるのは、ミルキの理想としている『男の浪漫』の一つでもあったから。
天使とピストル(ゾルディック家編)
朝食の席に現れたリマを見て、ミルキは小さくガッツポーズをした。
大きく芙蓉を散らした着物は鮮やかな青。リマの銀髪が映える色だ。
太目の紐で結わいた髪は、昨日のロリータ系とは違った感じの人形のよう。
ミルキはおそらくその着物の持ち主であり、着付けた人物でもあるカルトを振り向き、グッと親指を立てた。
それに気づいたカルトも同じように拳の親指をつきたて返してくる。
兄弟間のコミュニケーションは暗殺以外でも中々に良いらしかった。
「おはよう、リマ」
食卓のテーブルについていたイルミが立ち上がり、着物姿のリマへと近づく。
昨日の深夜に繰り広げられた家族会議を見ていた身としては、何となく複雑な気分がしなくもないが、そんなことはどうでもいい。
部屋からカメラを取ってきたい。ミルキは本気でそう思ったし、実際に近くにいた執事にそれを命じた。
「それ、カルが選んだの?」
こくん、と頷くリマを片手で抱き上げて存分に愛でた後、イルミは末弟を振り向いてグッと親指をつきたてた。
カルトも先ほどミルキに返したのと同じように、応える。
ゾルディック家五人兄弟。少なくともその内の三人は趣味が同じらしかった。
メイドによって用意される朝食を、静かに食べる。
本来ならば全員揃うことは稀なのだが、今は状況が状況だからなのだろう。
祖母とアルカ、そしてキルアを抜かしたゾルディック家の面々は全員が食堂に集まっていた。
リマは元々喋らないし、イルミとてマイペースで好きなときに好きなことを好きなように喋る。
ミルキは喋るよりも食べる方を好んだし、カルトはどちらかといえばお喋りではなく、食事中はさらに喋らない。
シルバは無言でパンを口に運び、キキョウは時折震える手でスープをすくう。
ゼノは食後の緑茶を楽しみ、マハは表情の読めない顔でデザートのフルーツを食した。
微妙に緊張感の張り詰めた、やけに静かな朝食。
そんな中で食事をして果たして美味しいのだろうか、とメイドは思わないでもなかったが、当然のごとく口にはしなかった。
彼女がするべきことは、主が紅茶を望んだら、それを用意するだけである。
20分も経った頃には全員の食器が下げられ、代わりに食後のお茶が並べられた。
そこでようやく、口を開く者がいた。
「リマと言ったか―――・・・・・・」
低く厳かな声で名を呼ばれ、ココアを飲んでいたリマが顔を上げる。
射るような視線を向けてくるのは、上座にいるシルバ。
パチパチと瞬く幼女に、彼は言った。
「俺と戦い、勝つことが出来たならイルミの傍にいることを認めよう」
何だか娘の彼氏を見定めるみたい、とそれを聞いていたメイドは思ったとか。
2004年9月13日