閑話(その頃、お子様組は)
引いている手は小さくて、簡単に握り潰せそう、などと考えながらカルトは廊下を歩く。
すでにメイドによって客室が用意されていたが、カルトはそれを無視して自分の部屋へと向かった。
一般人にとっては重い扉を開き、振り返る。
「どうぞ」
促してはみたものの、もうほとんど眠りに入っている客人は首をかくんと動かしただけだった。
真紅のワンピース。
胸元が編み上げになっているそれを、カルトは解こうとしてけれど面倒くさくなってやめた。
クローゼットの中から浴衣を選び出してそれを押し付ける。
クマの上に振ってきたそれを、はくっついていた瞼をどうにか開いて確認して。
そして睡魔に邪魔されながらも緩慢な動作でクマを近くの椅子に下ろし、ワンピースの胸元に手を寄せる。
編み上げを解こうとし始めたのを、カルトはじーっと見つめた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・切れば?」
半分夢の中ということもあり、の小さな手では芸術的な結ばれ方をしている紐を解けなかった。
見かねたカルトはそう進言して手を伸ばし、指先だけで紐を切断する。
余談だが、この真紅のワンピースはクロロが一流ブランド店を散々回って購入した一点物なのだが、まぁお子様二人には関係のないことだろう。
緩くなったワンピースを懸命に脱ぐに背を向け、カルトは自分の着物の帯を解き始めた。
寝巻きの浴衣を着こんで振り向くと、どうにかも浴衣を着れていた。
襟が右前になっていたけれど、寝るだけだし大した支障はないだろう。
ベッドは大きいから、自分たち二人くらいは余裕で横になれる。
掛け布団をめくって、やっぱりすでに立ちながら眠っているを押しやった。
ころん、と小さな身体が転がって、銀色の髪がシーツに広がる。
カルトは椅子に置かれているクマを見て少し逡巡し、結局それもベッドの中へ入れた。
自分との間ではなく、の向こう側に。
灯りを消して、ベッドに潜り込む。
少しだけ押すとは簡単に動いて、その軽さに目を瞬いて。
銀色の髪を身体の下敷きにならないように揃えてやり、大きな枕も半分譲って。
もうすでに夢の中に入るの寝顔と向かい合いながら、カルトはぽつりと呟いた。
「・・・・・・・・・僕ならつりあうよね」
とりあえずもう少し近づいて、ぴったりと額を合わせる。
くすぐったいような温もりが伝わって、カルトは目を閉じた。
こうしてお子様二名はすやすやと眠りについたのである。
余談だが、クマにはオート録音機能がついている。
2004年8月18日