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真紅の編み上げワンピースを愛らしく着こなしているリマ。
同色のヘッドドレスとブーツは、さらにその魅力をアップさせている。
そんな後ろ姿を眺めながら、イルミは尋ねた。
「あれ、クロロの趣味?」
「あぁ、可愛らしいだろう?」
「うん。俺としてはも青地に白レースも捨てがたいと思うけど」
「水玉のクラシックなワンピースも似合いそうだな」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ピンハとか」」
子供服談義で盛り上がり始めた曾孫とその敵を、マハは相変わらず何を考えているのか判らない顔で見つめていた。
天使とピストル(旅団編)
「気をつけて帰れよ」
ウボォーキンの大きな手で頭を撫でられながらそう言われ、リマはくすぐったそうに首をすくめながら頷いた。
フランクリンに抱き上げられ、フィンクスやノブナガと同じ目線でお別れの挨拶をする。
「また来いよ」
「今度は保護者連れでな。その方がいっそ楽だ」
「違いねぇ」
笑い声をあげる様は、つい先ほどまで戦闘しかけていた人物たちとは思えない。
そんな彼らにも、リマは小さな手で握手することで別れを告げた。
「リマちゃん、これ、俺の携帯電話のアドレス。暇だったらいつでもメールして」
「うっわ! シャル、てめぇズリーぞ!」
「盗むだけの盗賊じゃないと、こういうところでも便利なんだよ」
自慢げに言うシャルナークから紙を受け取り、そのままワンピースのポケットに仕舞う。
寄ってきたシズクは、残念そうに溜息をつきながらリマの銀髪を撫でて。
「三つ編み、したかったんだけどな」
くるくるくる、と指に絡ませては、少しだけ拗ねた顔で髪を解く。
「また遊ぼうね、リマちゃん」
シズクの言葉に、リマもしっかりと頷いた。
そのまま隣にいるマチを振り返り、手の中のクマを顔の位置まで上げて、右腕をうりうりと動かす。
可愛らしい動作にマチは笑みを浮かべて、リマの頭を撫でた。
「どういたしまして。誘拐には気をつけな」
「かなり今更だけどね。嫌じゃなかったら、また遊びに来て」
目線を合わせて言ってくるパクノダに、こくん、と頷く。
そしてフランクリンの腕から下ろされたリマは、目の前に黒いものが立っているのに気づいた。
自然と、腕の中のクマをきつく抱きしめる。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
鬼ごっこが再び始まるのかと思われた瞬間。
伸びてきたフェイタンの手が、とても優しくリマの頭を撫でたのだった。
ほのぼのとした空間を眺めて、シルバは内心で眉を顰めていた。
今回、自分たちが来る必要はあったのか。そんなことを考えたくもなるが、きっと辞めた方がいいのだろう。
とりあえず息子の気に入っている相手を確認できただけ良かったとするか、と彼は己に言い聞かせた。
「ふむ、あのお嬢ちゃんは相当やるようじゃの」
隣に立っている父親の言葉に、シルバはそちらを見る。
「ワシら全員を強制的に“絶”にし、身体的な動きをも抑える。うむ、実に見事じゃ」
「さすがイルミ兄様の選んだ方だね」
「イルミは趣味がいいのう」
カルトとゼノはリマが気に入ったのか、中々に好意的な意見を述べていた。
シルバとてあの小さな子供の実力に興味を覚えている。
だからこそ家を出る前に妻に言われた言葉を、素直にイルミに伝える気になったのだろう。
「イルミ」
「何、親父」
クロロと子供服談義に萌えているイルミが、何食わぬ顔で振り返る。
「一度家に帰って来い。キキョウが会いたがっている」
「当然リマも一緒でいいんだよね?」
「あぁ」
「ならいいよ。判った」
あっさりと頷くイルミに、クロロが笑顔で声をかける。
「あそこにある服とかお菓子とか、全部持っていっていいよ。リマのために買ったものだから」
「うん、ありがと」
「そのうちまた手土産もって遊びに行くから」
「そのときは前もって連絡して。――――――リマ」
いまだにフェイタンに撫でられていたリマを、イルミが呼ぶ。
くるりと振り向いて走り寄ってくる際に、別れを告げられていた団員たちが寂しそうな顔をしたのは仕方のないことかもしれない。
クロロは新鮮な気持ちで、けれどやはり淋しそうに眉を下げた。
正面まで来たリマと顔を合わせるように、イルミはしゃがみ込む。
廃墟の部屋の隅にある紙袋やビニール袋を指差して。
「あれ、クロロがくれるって」
ぱちくり、と目を瞬く様に頷きを一つ返す。
少し戸惑ったような表情を浮かべてから、リマはクロロの方を向いて。
ありがとう
初めて、彼へ笑顔を浮かべた。
そのことにクロロが柄にもなく動揺している間に、リマはパタパタと紙袋の方へ走っていく。
そして立ち止まると、抱えていたクマを床へ下ろした。
何をするのかと部屋にいた誰もが注目していると、リマがぽん、とクマの頭を軽く叩く。
すると、ぬいぐるみがもこもこの足で立ち上がった。
えい、と一歩足を踏み出したが転びそうになり、それでも踏ん張って仁王立ちする。
クマはもこもこの顔を凛々しくも上げて。
そして、ぱかっと口を開いた。
ごおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおぉおおおおっ
・・・・・・すぽん
こうして隅を占領していた荷物たちは、一瞬でクマの中へと吸い込まれたのだった。
ゾルディック家&リマを乗せた飛行船が去っていくのを見送りながら、クロロはポツリと呟く。
「次の欠番を埋めるのは、あの子で決まりだな・・・・・・」
その言葉に異論があるはずもなく、団員たちはひたすらに頷くのであった。
<幻影旅団編・完>
2004年6月26日