天使とピストル(旅団編閑話・おにいちゃんといもうと)





眠りから目を覚まし、パクノダの膝から起き上がった
ごしごしと目を擦る様は可愛らしく、遠くから見ていたフィンクスやフランクリンは頬を緩める。
寝乱れた髪を優しい手つきで整えてやるパクノダを、羨望の眼差しで眺めながら。
話しかけるタイミングを計りつつ、注視していたそのときに。
「・・・・・・あ」
誰かの呟きに、が顔を上げる。
そしてすぐ目の前にいる黒いものに気がついて、瞬きをした。



フェイタンは見下ろしている子供の小ささに内心で驚いていた。
団員の中ではコルトピの次に小さい自分だが、それでもこの子供はよりは絶対に大きい。
やぱり団長はロリコンだたか、などと失礼なことを考えて。
そしてふい、と視線を逸らした。



は突然現れた黒いものを見上げた。
それは目の前に立っただけで動かないので、自分も同じように動かないでいてみる。
先ほどマチに直してもらったぬいぐるみを、腕の中に抱きしめて。
そして黒いものがふいに視線を動かしたので、つられて同じようにそちらを向いた。



次の瞬間、クマはの腕の中からフェイタンの手へと移動していた。



なくなってしまったふわふわに、はパチクリと目を瞬いて。
そしてそのクマを持っているのが目の前の黒だと分かると、ほんの少しだけ首をかしげる。
小さな手を伸ばした。
――――――それなのに。



ひょい



クマが逃げた。



伸ばした手は空を切って、黒の手にあるぬいぐるみには届かない。
クマを遠ざけたフェイタンは、その目を心底楽しそうに細める。
はもう一度手を伸ばした。



ひょい



「・・・・・・」



ひょい



「・・・・・・・・・」



ひょい



「・・・・・・・・・・・・」



ひょい



伸ばしても伸ばしてもクマは逃げていく。
伸ばされても伸ばされてもクマを遠ざける。
はついに立ち上がり、フェイタンは軽く一歩下がる。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



ひょい



カーン、と勝負の鐘が鳴った。





瓦礫の散らばっている部屋を右に左にフェイタンが走る。
その手の中にあるクマを目指して、がパタパタと追いかける。
舞い上がる埃を見ながら、パクノダは溜息を吐いた。
「フェイタン、これじゃ兄っていうより・・・・・・」
「好きな子に意地悪しかできないガキって感じだな」
フィンクスもフランクリンも同意して、そしてまだ走り回っている二人に視線を送る。
追いかけっこはまだまだ終わる様子がない。



おにいちゃんと、いもうと?





2004年6月16日