念糸ではなく、ちゃんと市販されている綿の糸を使って、熊の右腕を直していく。
ほつれていた肩から出ていたふわふわの綿も、一つ残らず中に仕舞い込んで。
手際よくという言葉では片付けられないほどのスピードで裁縫し、元通りになった熊を、マチはに差し出した。
受け取って、小さな手で抱きしめて、熊の右腕をうりうりと動かして。
元気になったぬいぐるみを胸に、は顔を上げる。



ありがとう



「・・・・・・どういたしまして」
可愛らしい謝礼に、マチは珍しく小さく笑みを浮かべた。





天使とピストル(旅団編)





「団長ってロリコンだったんだね」
シズクがいつもどおり抑揚なく言うのに、パクノダは肩を竦める。
真っ黒なワンピース、抱えている大きなテディベア。
銀色の長い髪を背中にながしているは、とても愛らしい。
けれど、幼い。
まだ一桁だろう年齢の幼女が、自分たちのリーダーと一緒にいる姿。
それを考えて、けれどすぐにシズク・パクノダ・マチはそれぞれ思考を放棄してしまった。
「犯罪だね、団長・・・・・・」
「今更だけどね」
「まぁ仕方がないんじゃない?」
パクノダがそう言って、膝の上に広がる銀糸を撫でる。
慣れない場所に連れてこられて疲れたのか、それとも連れてきたことに対する反抗なのか。
は今、小さな身体をさらに小さく丸めて眠ってしまっていた。
それもクロロではなく、パクノダの膝を枕にして。
むすっと不貞腐れているリーダーの視線を感じつつ、けれど女性陣は無視して話を続ける。
「だけどこの子可愛いよね。団長が攫ってきたのも分かるかも」
シズクはそう言って手を伸ばし、微かな光に輝いている銀糸に触れる。
「いいな、ストレートの髪。後で結ばせてくれないかな」
「頼んでみれば? 団長が言うより可能性は高いと思うよ」
「うん、そうだよね」
さらに扱き下ろされて、向こうにいるクロロが肩を揺らして反応する。
どうしようもないわね、なんて思いながらパクノダはの髪を梳いて。
娘か妹がいたらこんな感じかしら、などと考えて微かに微笑んだ。



めったにないお客様を女性陣に取られた男たちは、部屋の隅から遠目にを観察していた。
「団長とあの子じゃ、殺人鬼とその獲物って感じだよな」
「・・・・・・フィンクス」
「おまえとじゃいいとこパパと娘ってか?」
「あぁ? おまえじゃ即行で警察に捕まってるだろうよ」
フィンクスの言葉にクロロが反論しようとしたものの、ノブナガが介入してそれは流されていく。
またしてもポツンと置き去りにされたリーダーなど構わずに、団員たちは話を続けて。
「俺とちゃんなら家庭教師と御令嬢かな。あー容姿がまともで良かった」
「んだと? シャル、それじゃまるで俺たちが普通じゃねぇみてーじゃねぇか」
「ウヴォーはどう見ても普通じゃないね」
「フェイタン、てめぇまで・・・!」
盛り上がっていくシャルナークたちを片目に、フランクリンはクロロを覗き見る。
その端正な顔は眉間に皺を寄せながら、女性陣の傍で休んでいるに向けられていて。
どうしようもないな、と彼は先ほどのパクノダと同じようなことを考えた。
「フランクリンとなら、ボディーガードと御令嬢。フェイタンとなら・・・・・・」
「兄と妹じゃねぇか?」
「・・・・・・何でそうなるね」
「身長差が俺たちよりねぇからさ、兄妹でピッタリ」
ぎゃははは、と笑う彼らと、小柄なことを指摘されて眉を顰めるフェイタンと。
ファーのついたコートを身に纏っているクロロは、誰にも聞こえないようにポツリと呟く。
「・・・・・・俺だって、髪を下ろせば兄妹くらいに見えるさ・・・」
あまり自慢にならないのを、果たして彼自身分かっているのかいないのか。
とりあえず、盗ってきたはずのお宝も、今は何故か彼の手の届かない位置にある。
溜息を一つ吐いて、クロロは立ち上がった。
「団長?」
「・・・・・・買い物に行ってくる」
ちゃんにはリボンよりもレースが似合うと思うよ」
「菓子とか好きなんじゃねぇか、子供ってのは」
「マチかシズク、団長と一緒に行ってやれよ」
「団長が一人で子供服買たら犯罪ね」
「・・・・・・・・・おまえら」
凄んでみても軽く笑い飛ばされるだけ。
そんなこんなでお供を数人引き連れて。
お姫様のご機嫌を治すために、クロロは街へと繰り出していくのだった。





2004年6月16日