夏休みの宿題なんつーもんは、最初の三日で終わらせるのが当然だ。あーん? 最後の三日が普通だって? そんな後回しにしといたら遊べるもんも遊べなくなるじゃねーか。ただでさえ八月とくれば、年間最大のイベントが控えてるっつーのに。夏のお台場、ビッグサイト! 当然今年の夏コミも三日間完全制覇だ!
「ねぇ、景吾。読書感想文何にしたー?」
「『ひぐらし皆殺し編』にしたかったところだが、残念ながら『ホームレス中学生』だ。400字詰めの原稿用紙五枚だろ?」
「少ないよりは多い方がいいし、きっちり2222字で仕上げてみちゃった。ちなみに『To Heart』は諦めて、大人しく『西の魔女が死んだ』にしたんだけど駄目?」
「成人向けで書くと、教師が本気で読むくせに建前だけで説教してくるぞ。プロットは仕上げたのか?」
「構想段階で没案決定? なので形にしてませーん」
「ちっ!」
どうせなりゃ書き上げてから別のものにすればよかったものを。俺様の舌打ちに笑いながら、は手の中のゲーム雑誌をめくってやがる。当然ながらこいつも宿題は最初の三日で終わらせる口だ。まぁ、俺様には三日もいらないけどな。英語のリーダーも数学のドリルも自由研究も、一日あれば十分だぜ。
「それより聞いて聞いてっ! ブログがね、10万ヒットいったの!」
「あぁ? 早すぎねーか? 一週間前に開いたばっかだろ」
「やっぱりゲーム攻略レビューって食いつきがいいね。成人向けも完璧網羅だし、すでに『攻略の神』とか呼ばれちゃった! あはは、新世界の神になっちゃう!? 一昨日のライト君、面白かったー!」
「デスノは深夜枠の癖に完璧だったからな。二時間に短縮されるとメロの出番がなくて物足りねぇが」
「景吾、メロ好きだもんね? あと粧裕ちゃん」
「おまえはLだろ? それとジェバンニ」
「もっちろん! 彼を見習って『天使にチュ☆』も一晩で攻略しちゃった!」
「なっ!? 昨日発売の18禁じゃねーか! 美の天使、ハニーからやったんだろうな!?」
「まぁ一応ねー。でも個人的おススメは沈黙の天使、シャティ? いやもうあれは『攻略の神』の私も度肝を抜かれたって。いいよねぇ、ふふふ。ちょっとあれはクるって。身体の軟らかさ、胸とかお尻とかの質感、汗とかいろいろの液体表現も綺麗だけど本物っぽくて。やーん、続編出ないかなっ! むしろ製作側に圧力かけよっかな!」
「ちょっと待て! どこだソフト! 全部データは取ってあるんだろうな!? なかったら泣かすぞ、おまえ!」
「あはは! 大丈夫、攻略レビューはブログにあげといたから。あれ見ればいくらゲーム音痴の景吾でも、隠しキャラのソフィちゃんまでやれるって。あの子はもう人参が・・・ってごっめーん! ネタバレでしたぁ!」
「わざとらしすぎる謝罪はいらねぇ!」
ぺちっと自分の額を叩いて舌まで見せやがったは、変なところで凝り性だ。ちっ! 何で俺は昨日の夜、の部屋にいなかったんだ! いりゃあ天使たちを落としていく様をひとつ残らず目にすることが出来たってのによ! 欲張って忍たまのDVDなんか一から観なけりゃよかったぜ・・・。でも地味に面白いんだよ、あれは!
「個人的には食満先輩? あーでもタッキーたちアイドル四年も捨てがたい!」
「利吉だろ、利吉。それと土井だな。それにしても真田の原稿は終わったのか? もう入稿しねぇと夏コミには間に合わないだろ?」
「今朝の電話では、残り10ページって言ってたけど」
「じゃあ20ページは残ってるな。プライドだけは高いあいつの張りそうな見栄だぜ」
「そろそろ印刷所の超早サービスも危ういし、手伝いに行ってあげよっか。何たって初のコミケデビューだもんね!」
「買う奴がいるといいけどな、300ページの超王道オリジナル少女漫画を」
「懐古主義でいいんじゃない? ウルトラの星も初期に戻る時代だし」
が立ち上がって、スカートの裾を軽く払う。仕方ないから俺様も携帯と財布をジーパンの後ろポケットに差し込んだ。真田のアシスタントなんか冗談じゃねぇが、今回だけは話が別だ。何たって夏の祭典。そこにひとつでも多い新作を並べるのは、もはや参加サークルの義務だろう。
「どうせなら鳳も呼ぶか。あいつは二次は嫌いだが、真田はオリジナルだしいけるだろ」
「忍足は無理かもね? マクロスFの衣装、シェリルが上手く作れないって癇癪起こしてたし」
「はっ! そのくらい出来なきゃ氷帝テニス部員とは認められねぇな」
家から一歩出れば凶悪の日差しだが、すぐに冷房のかかったロールスロイスに乗り込む。途中でモスとコンビニに寄って、適当に食い物でも買ってくか。窓から見える街並みには俺たちと同じ学生も多く、補導されることもなく昼真っから出歩けるのが休みの何よりの特典だ。自由を完璧に謳歌するため、宿題を真っ先に終わらせるのは当たり前。ザクが赤いのよりも当たり前だぜ!
「さぁ、今年の夏も張り切っていきましょう!」
が心底楽しそうに、手を振り上げて笑った。俺たちの夏は、今まさに始まったばかりだ。
夏休みの友
(もちろん家関係のお仕事はありますが、それをこなしてもなお時間のあるところが嬉しいらしい跡部様&ヒロイン。)
2008年8月23日