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「ねぇねえねえねえねえねえねえねえねえねえ跡部――――――――――っ!!!」
「んだよ、うるせぇな」
「欲しいものがあるんだけどくれないっ!?」
「あーん?」
欲しいもの?
なんだそりゃ。
「男子テニス部二年準レギュラーの日吉若くんっ!」
日吉?
あぁ、あの俺を下克上するとか言ってる奴か。
「あれ、ちょうだいっ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジかよ。
(いや絶対マジだ。こいつはそういう女だ)
ビリビリクラッシュメン
古典の教師が出張だかなんだかで自習時間。
さっさと課題を終わらしてボケッとしてたら二之宮葵子が寄ってきた。
こいつは俺と同じクラス。まぁ結構喋る仲だな。
うるせぇしテンション高ぇし邪魔になるとこばっかだけど、まぁこいつは悪くない。
頭はキレるし容姿もいい。俺の傍にいるには十分に合格点だ。
女として意識するには程遠いけどな。だってこいつ、喋りすぎ。
地球上に俺とこいつしかいなくなったら考えてやらないでもないけどよ。
「でね、でねでねでね、日吉若ってば私のこと受け止めて『鈍いですね。身体鍛えたらどうですか』って! やーもう素敵! あの性格の曲がり具合が最高っ!」
「おまえの言語中枢は相変わらずイカれてるな」
「なんてーの? 素直なんだけど余計なトコが素直で“本心は隠してるんです、でも構って下さい”みたいな!? うっわー可愛いっ! 可愛いよぉ!!」
「小学校低学年からやり直せ。もう一度日本語を学んで来い」
「あのマッシュルームな髪型もオッケー! サラサラでねー風が吹くとそよいで切れ長の目が見えるの! 獲物を狙う鷹のような目! あっはっはっは、肉食だぁ!!」
「・・・・・・・・・幼稚園からやり直せ」
人の話も聞かずにベラベラベラベラ喋りやがって。(だが自習時間なんて騒いでる奴ばっかだからこいつの声もそんなに目立ってはいない)
これだからそんな大和撫子みたいな容姿してるくせにモテねーんだよ。
黙ってりゃ男なんかわんさか寄ってくるだろーに。損してんぞ、おまえ。
その顔とスタイルと頭脳と運動神経と家柄を活かして御曹司でもゲットしろ。まぁ俺以上の男なんていないけどな。
間違っても性格を活かすなよ。絶対変な男を引っ掛けるからな。(もう遅いか)
どうでもいいがポッキー持ってきて食いだすなよ。
俺はメンズよりもつぶつぶいちごの方が好きなんだよ。知っててメンズ開けんな、バカ。
「ねぇねぇ跡部ー。日吉若、私にちょうだいよー。あんたホモじゃないでしょ? だったらいいじゃん」
「アホなこと抜かすな。メンズ全部食うぞ」
「つぶつぶいちごは売り切れでね、まぁこれで満足してよ」
「廊下でぶつかって抱きとめてもらうなんざ少女漫画でも今時ないな。おまえはいつの人間だ」
「十二単の似合う平安時代。あ、ちなみに跡部は左大臣ね」
「なんで帝じゃねーんだよ」
「帝は榊先生だもん」
「可愛い子ぶってんじゃねーよ。似合うけどな」
「ありがと。ちなみに榊帝のご夫人は青学の竜崎先生ね。姐さん女房」
「ぶっ!」
「右大臣はもちろん手塚国光で、その参謀に不二周助。もちろん跡部の参謀は忍足ね。うっわぁ天才対決?」
「まぁまぁの配役なんじゃねぇの。俺のライバルが手塚っつーのは物足りねぇけどな」
「で、私は跡部の従妹? それとも恋人? あっはっはっは似合わなーい!」
「こっちこそ願い下げだ」
「じゃあ妹で。でもって身分の違う日吉若と出会って恋に落ちて周囲に反対されて瀬戸内海に飛び込んだりするんだよ! うっわ素敵! ラブロマンス!」
「バイオレンスだろ」
二之宮の相手は疲れる。ポッキー食っててもエネルギーを補給できないほど疲れる。
こんなお喋りスズメと俺のどこが似てるって?
忍足、てめぇ次に会ったときにシメる。覚悟しとけ。
「というわけで日吉若、私にちょうだい?」
「日吉は俺の下僕だが俺のもんじゃねぇ」
「じゃあ勝手にもってっていい?」
「好きにしろ」
「ほんとっ!?」
キラキラとゴールドのオーラを放って笑う二之宮。
日吉、悪いことは言わない。今すぐ逃げろ。
俺は俺の味方だ。おまえと二之宮、どっちに味方でもない。
だがこんな俺でも後輩は可愛いからな。
余計なことは言わない。すぐに青学にでも転校しとけ。
手塚相手に下克上でもしてろ。(無理だと思うけどな)
「やったぁ! 許可ゲット! 待っててね、日吉若! 今すぐ行くから受け止めてねっ!」
こうなった二之宮は誰にも止められない。(美人なくせになんでそんなテンションなんだよ!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下克上は諦めろ、日吉。
絶対無理だ。
「なぁ跡部、どしたん? なんや葵子がめっちゃ高速スピードで出てったんやけど」
「スキップしそうな勢いだったよな! まぁ葵子はいつも変だから変じゃないけど」
授業が終わって昼休みになると同時に隣のクラスから忍足と向日が来やがった。
ちなみに二之宮は忍足の言ったとおりスキップダッシュで教室から出て行った。
行き先なんて判りすぎてて言う気にもならねぇ。
「忍足。俺のどこが二之宮と似てるって?」
「はぁ? 何や突然」
「いいから答えろ」
「せやかてソックリやん。さすがは幼馴染、思考パターンも似てくるもんやな」
「ソックリ、だと・・・・・・・・・・?」
この俺が、
あの葵子と、
ソックリだと?
ソックリだと!?
「忍足、てめぇ今日の部活前に学校10周してこい」
「・・・・・・・・・・・はぁ!? なんで俺が」
「うるせぇ! 今から走って来い!!」
俺と葵子を似てるなんざその目は節穴か!
どこが似てんだよ! どう見たって俺のほうが優れてるに決まってんじゃねーか!
あんな喋り捲っていつ息継ぎしてんのか判んねぇような男の趣味悪い女と一緒にすんじゃねぇよ!!
「跡部、今の言い方って葵子ソックリー!」
「・・・・・・・・・」
一度ならず二度までも・・・・・・・・・!!!
こんな屈辱があるか!?
いや、ない!
「向日! てめぇも走って来い!」
「・・・・・・・え、ええええええええええ!? なんで俺までっ!?」
「うるせぇ! 走り終わるまで俺の前に姿見せんな!!」
泣き言いってる向日を忍足と一緒に教室から追い出した。
誰が葵子と似てるって? アーン?
俺とアイツの似てるとこなんざビジュアルの良さと才能と家柄ぐらいだろーが。
性格が似ててたまるかよ、あんな騒がしい女と。
あーこれでやっと優雅に昼食を取れる・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ねえねえねえねえねえねえねえねえ景吾ちょっと聞いてよ―――――――っ!! 日吉若、『興味ありません』だって!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あっはっは! もうめちゃくちゃ可愛いっ! 無愛想に鉄仮面被ってるふりしてちょっとだけ照れてるの! あぁもう可愛い! ペットに欲しい!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いいよねぇ、ああいうの。オトし甲斐があるよねぇ。ふふふふふふふ、どうやって攻めようかなー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やっぱ手作り弁当? それとも待ち伏せ? 純情可憐に交換日記を押し付けるっていうのも面白いよね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どーれーにーしーよーうーかーなー♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
こいつと、俺が、似てるって?
――――――言った奴、殺す!
「景吾、ちょっと聞いてるー?」
「聞いてるわけねぇだろうがっ! なんで俺とおまえが似てなくちゃいけねぇんだよ! 心外だ! 人権問題もいいところだぜ!!」
「えーじゃあ弁護士通じて話する? 離婚調停とかして慰謝料に日吉若ちょうだい!」
「安っ!」
「じゃあこの前買ってた新作のゲーム! まだクリアー出来てないんでしょ? もういい加減に諦めてやらせてよ」
「うるせぇ! 女がギャルゲーすんな!」
「女の子の心理は女の子の方がよく判るんだよ。というわけで男の心理で日吉若のオトし方を一緒に考えて!」
「そんなん脱げば一発だろ」
「それは最後の手段なの! 乙女はいつまでも真っ白汚れなくいたいものなのよ!」
「―――――ハッ」(嘲笑)
「うっわーイイ性格!」
「アーン? 俺様を誰だと思ってんだ?」
「俺様何様跡部様ー! というわけでご教授ヨロシク!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ」
マジで俺と葵子が似てるなんて言った奴は誰だ。
ぜってぇ似てねぇからな。もう二度と口にするんじゃねぇぞ。
したら最後、この世のものとは思えない目に遭わせてやる。
「だからユリちゃんを落とすには映画館で手を握っちゃいけないんだって」
「あぁ? 女は普通逆だろ」
「甘いね、景吾。そこでさりげなく耐えるのが男ってものよ! ユリちゃんは引っ込み思案なんだからゆっくり攻めなくちゃ」
「じゃあアカネはどうなんだよ?」
「あの子はもう押せ押せ。押し倒すくらいの勢いで行っちゃってオッケー。おすすめポイントは保健室か体育倉庫」
「おまえ攻略本、買ったのか?」
「買うわけないでしょー。あの程度のゲームで買ったらお金がもったいない」
「・・・・・・・・・明日、暇か?」
「手作りお菓子で日吉若を攻めるつもり」
「必要なデータは教えてやる」
「ならオッケー。何時ごろに行けばいい? 昼過ぎ?」
「だな。母さんが一緒にメシ食いたいって言うだろうから12時に来い」
「ん、判った」
攻略本を見てやるより葵子に聞いた方が早いからな。
女にギャルゲー聞くっつーのも普通じゃねぇけど、まぁ葵子だし。
日吉のデータでも教えてやれば50:50だろ。
なんなら部活で撮った写真もつけてやる。
「あーもう景吾ってば最高! 愛してるわっ!!」
「あーはいはい。俺も愛してるぜ、葵子」
「もう熟年夫婦だもんねー」
「付き合いももう15年目だしな」
だからって性格は似てないはずだ。
そう、絶対!
似・・・て・・・・・・な・・・・・・い・・・・・・・・・・・・・はず。
「じゃあまた明日ね。ビデオ見て寝過ごさないでよ?そのときは容赦なくコブラツイストをお見舞いしてあげる」
「おまえこそ手土産くらい持って来いよ」
「実験台にしてあげるね★」
似てない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よな・・・・・・・・・・・・・・・?
似てないと誰が言ってくれ!(頼むから!)
2003年6月7日