先輩っ」
友人が菊丸先輩と昼食を食べることになったので、一人で食べる場所を探してたら、階段のところで声をかけられた。
振り向けば5階から降りてくる女生徒。
小柄で細身。黒いつやつやの髪は肩より少し長いくらい。
目が大きくて色白の美少女。でもちょっと生意気そう。
・・・・・・・・・予想はつくが、カモン、君記憶帳!



名前:越前リョーコ(えちぜんりょーこ)

クラス:1年2組・女子4番
部活:青学女子テニス部レギュラー
特筆事項:可愛い後輩




―――越前、めっちゃ美少女じゃん!





天地無用!(case02:越前リョーマ)





青学セーラーの短い裾を翻して越前が降りてくる。
私の目の前に立ったのは身長150センチくらいの女の子。
・・・・・・サイズにあんま変わりがない、って言ったら元の世界の越前は怒るだろうな。
先輩、これからお昼ですか?」
おぉ、マジで美少女だな!
「あぁ、そうだけど」
「あたしもこれからなんです。一緒に食べません?」
「いいよ。どこで食べる?」
何だか周囲の視線が痛いような気がしなくもない・・・。
何だ? 私がカッコイイからか? それとも越前が美少女だからか?
どっちにしろ、ものすごい違和感・・・。
チクチク視線に晒されて、とりあえず私は越前の後について歩いて行った。
・・・・・・・・・どうよ、男の私。



連れてこられたのは図書室の一番奥の空間。
なんでも人が全然来ないから授業をサボったりするには一番の場所らしい。
つーか越前、あんまりサボるなよ? 私も人のことは言えないんだけどさ。
先輩、今日は何か大人しいですね」
「いや、別にそんなことはないけど」
ぎゃあ! いつもの君ってのはどんななんだ!? 男の私なんて女の私に判るわけないじゃん!
「何かあったんですか?」
食べていた猫のキャラが印刷されているお弁当箱を横において、越前が聞いてくる。
・・・・・・・・・っていうか、越前。おまえマジで可愛いぞ。
そうか・・・越前が女の子になるとこんな美少女になるのか。
そういえば前にやってもらった女装(『星に願いを』参照)もすごく良く似合ってたしな。
なんてボケッと考えていたら、何故か前に座っていた越前がいつの間にか隣にいて。
先輩」
女の子越前が見上げてくる。
「何かあったならいつでも言ってって言ってるじゃないですか」
いつもよりも細い、小さな手が握り締められていて。
「あたしは、先輩の力になりたいんだから」
気がついたら、キスしていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?



?????????!!!



「ん」
越前の小さな声が漏れる。
・・・・・・・・・・・・・・・つーか、待て?
ワタシは今、何をシテるんだ?
目の前には伏せられた長い睫。
うっすらと赤みを帯びている頬。
私の手が、なんかいつの間にか小さな手を握っていて。



一応言っておく。私はレズではない。
だから今の越前に反応したのは女の私ではなく、男の君なのであって。



男って・・・! 男って・・・!!



ど、どんなに気まずくても、いつまでもキスしている訳にはいかないし・・・・・・。
殴られる覚悟で、そっと唇を離した。
越前は・・・・・・グロスを塗ったみたいに唇がつやつや。
落ちつけ、男の私!
「・・・・・・、先輩・・・」
呟く越前はやけに色っぽい。つーか中学一年でこの色気は反則だろ!
でもってイチイチ反応すんな、男の私!
ちょ、ちょっと待って。
お願いだから待って!



男の私が女の子越前と初体験だなんてイロイロと間違ってるだろ! なぁ!?



流されそうな雰囲気の中に予鈴のチャイムが鳴ってくれて、マジで助かった。
あのままだったらどうなってたかも判らない・・・!
こ、怖い。いやもうマジで怖い!
この世界、本気で怖いぞ!!

約一週間、無事でいられないかもしれない・・・・・・・・・。





2003年11月6日(2005年7月4日再録)