「おはよう、君」
「おはよー! ねぇ、今日のお昼一緒に食べない?」
「お、おはようございます、先輩!」
「あ、あのこれっ! ク、クッキーなんですけど、どうぞ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

この世界の君。
君はひょっとしなくてもタラシだったりするのか・・・?





天地無用!(case01:友人と桃城武)





学ランがものすごく違和感なく似合ってる。つーかこの世界の私は男だから当然なのかもだけど。
君記憶帳によると、この世界の私の身長は178センチ。体重は60キロ。
学校は変わらず青春学園中等部2年8組。部活も元の私と変わりなく管弦楽部でヴァイオリン。
ちなみに一人称は「俺」。
・・・・・・・・・注意するのは言葉遣いだよな。私だって女らしくは喋らないけど、今は男だから余計に注意しないと。
でないと、「取り返しのつかないこと」になってしまう・・・!
(なんかよく判らないけど、でもものすごく嫌な予感がするんだよっ!)



学校への登校途中で、声をかけられるかけられる。
男だからなのか、元の私よりもスゴイな。遠慮がないぞ、女性諸君。
バス停を通りかかった際にはOLさんに携帯ナンバーin名刺を渡されるし、他校の女の子が途中で待ってて手紙を渡してくるし、学校近くでは先輩後輩同級生問わず挨拶してくるしてくる。
それでも男も同じように話しかけてくる(しかも笑いながら)てことは、この世界の君はなかなかイイ男なんだろう。
そんなことを考えながら校庭を歩いていると、何やらテニスコートの方で部活をやっているらしく、何とは無しにそっちを見た。
向こうでもちょうどこっちを見ている女の子がいて、その子が私に向かって大きく手を振っている。
「おはよー!」
さぁ! さっそく役立つ時が来たぞ、君記憶帳!!
鞄から急いで取り出して、適当なページを開く。
そうすると魔法としか思えない記憶帳はスラスラと文字を浮かばせて。



名前:桃城武美(ももしろたけみ)

クラス:2年8組・女子15番
部活:青学女子テニス部レギュラー
特筆事項:話しやすいイイ奴




テニスコートのフェンスの向こう側で手を振っている女の子。
身長は165センチくらい。普通の女の子に比べるとがっしりした体つきをしてるけど、運動部の女の子ならこれが普通くらいだろう。
っていうかショートカットの髪と笑顔がめちゃくちゃ明るい雰囲気の子に見える。
桃城武美・・・・・・?
モモシロ、タケミ・・・・・・?
ももしろ・・・・・・。



桃城武か!



うわ、うわわわわわわうわうわわうわわわ!!
「・・・マ、マジで桃・・・・・・?」
信じられないと思いながらも近づいて話しかけると、目の前のさわやかな女の子は不思議そうに首を傾げて。
「マジでって何? 今日は遅刻じゃないんだね。にしては珍しいじゃん?」
「・・・・・・・・・・や、いろいろあって・・・」
桃の言葉遣いが私の知ってるものとは微妙に違う。
・・・・・・ああ、そういえば魔法使いさんが言ってたっけ。
『名前と言葉遣い等がちょっと違う』って。
ああ・・・・・・それはこういうことだったのか。やっと判った。
っていうか・・・・・・・・・・。

桃、可愛いんだけど。

なんて言うか運動部独特の気の置けない感じ?
明るくて、でもって気が強そうで、負けず嫌いそうな。
桃を女の子にするとこんな感じになるのか!?
うわっ! 女の私よりも全然可愛いんだけど!!
?」
「・・・・・・や、何でもない」
「どうしたの? 今日は何か変だね」
「や、大丈夫だから」
桃は桃だけど、今は女の子の桃なんだ。だから男桃相手とは違った対応をしなくては。
つーか今の私は男だし。
「桃は朝練中? さすが強豪テニス部だな」
「まぁね。少しでも練習しないと身体が鈍っちゃって」
「あはは、桃らしい」
スコートを穿いている桃がものすごく貴重に見えて、でもそれが女の子だから違和感なく似合ってて。
・・・・・・・・・倒錯世界だ!頭がおかしくなりそうだ!



ラリーの順番待ちをしているらしい桃と話をしていると、校門の方から一人の男子生徒が近づいてくるのが見えた。
・・・・・・・・・・・・・・見覚えある。見覚えあるぞ。
このカッコイイんだけど独特な感じ。でもって周囲にあんまりアンテナを張ってない感じ。
この男子生徒が女の子だったら、と考えると答えは一つだ。
・・・・・・テニスコートの端の方から、一人の女の子がその男子生徒めがけてダッシュしてきて。
「お、おはよっ!」
「あー・・・はよございます」
男は判ったからいい! 女の子をチェックだ記憶帳!!



名前:菊丸英(きくまるすぐる)

クラス:3年6組・女子6番
部活:青学女子テニス部レギュラー
特筆事項:友人のことが好き(アタック中)




・・・・・・菊丸先輩かよ!



身長は桃と同じくらいで、クルクルくせっ毛の髪をポニーテールにしてる女の子が、真っ赤な顔で友人(この世界では私と同じく男)に話しかける。
「あ、あのねっ!」
「はい?」
「今日お弁当作ってきたから、一緒に食べない!?」
「あーすんません。俺も弁当持参なんで」
―――おい!!
女の子菊丸先輩の猫耳が沈んでるように見える。(イメージ)
女の子桃は私の隣で苦笑してるし・・・・・・。
性別は変わってもここらへんは変わってないのか。微妙な・・・。
でもやっぱり例え中身が菊丸先輩でも女の子にそんな悲しい顔はさせたくないんだよっ!
男になってる友人の腕を引いて耳元で話しかける。
「バカッ! 食べてやれって! 菊丸先輩はおまえと一緒に食べたいだけなんだからさ」
「でも昼はいつもおまえと一緒に食ってるし・・・」
「俺のことはいいから!」
ああ・・・・・・本当に性別は変わっても中身は変わってない・・・!
とりあえず何を考えているんだかイマイチ不明だけど、友人はいまだうつむいている菊丸先輩へと向き直って。
小さく溜息をついて声をかけた。
「中庭でいいっすか?」
「・・・・・・え?」
「俺、3限が体育だから弁当も2個くらいなら食えると思うし」
「ほ、本当っ!?」
コクリと頷く友人と、めちゃくちゃ可愛い顔で満面の笑みを浮かべる菊丸先輩。
桃はやっぱり仕方ないな、って顔で二人を見てるし。



朝の短い時間で判ったこと。
『性別は変わってもやっぱり中身は変わらない』ということ。





学天主人公の友人は、『The ups and downs of life.』のヒロインです
2003年11月5日(2005年7月4日再録)