14:跪き、忠誠を誓おう
初めて入ってみた刑務所というのは、案外平和だった。
やっぱり最初の日に同室の人間を血祭りにしたのがいけなかったのかもしれない。見せしめのつもりだったのだけれど、どうやら効き目が強すぎたらしい。
すぐに独房へ移されて、今はワンルームマンションで食事は一日三回、適度な運動に適度な娯楽。これが「ムショ暮らし」というものならば、ずいぶんと快適だ。
「骸さーん、暇れーす」
「静かにして下さい、犬。僕は今、『ムショ暮らし』を満喫しているんです」
「千種、ひまー」
「・・・・・・うるさい」
この生活の中で唯一つ不満があるとすれば、この部屋に窓がないことぐらい。
青空が見えない。空さえ見れれば、僕は何時だって思い出せるのに。今までの人生の中で最も充実していた、あの短いジャポネの旅を。
沢田綱吉君は元気だろうか。元気でドン・ボンゴレをやってなかったら殺しに行かなくてはいけない。彼は僕を倒した唯一の人間だから、まだまだ元気でいてもらわないと。
アルコバレーノも元気だろうか。あの漆黒の死神は今もボンゴレにいるのだろうか。だとしたら今度は彼と殺りあってみたい。それと並盛の風紀委員長とも。
あぁそれと、忘れちゃいけない。
僕の頭を撫でたあの人は、今も元気でいるだろうか。
彼女は確か沢田綱吉君の叔母だったはず。さんといったか。彼女は今どこにいるだろう。日本だろうか、イタリアだろうか。
頭を撫でられたのなんか生まれて初めてで、そして今のところ最後になっている。あぁ、思い出したら会いたくなってきた。
「千種、犬」
「はい、骸様」
「飽きました。ここを出ますよ」
「やった! 待ってましたー!」
とりあえず看守を呼んで操らなくては。そしてボンゴレに殴り込みを。
そうすればきっと、あの人はもう一度僕の頭を撫でてくれる。
心地よい想像に何だかやけに楽しくなった。
待っていて下さい、僕のあなた
2006年2月28日