08:君は楽園を知らない
その腕が、その身体がどんなに柔らかいか、知らないわけがないだろう?
知ってて拒んでいるなら、君の神経を疑うね。だけど判らないわけじゃないよ。
僕はただ、君と真逆をいったに過ぎないだけさ。
「ねぇ、抱きしめてよ」
振り向いた相手は、綱吉によく似ている。草食動物の代表例みたいな、鋭さとは無縁の瞳。
まぁ最近の綱吉は肉食動物になりかけてるけどね。その原因が目の前の相手だというのなら、興味を抱くのも当然だろう?
「雲雀君、お疲れ?」
「まぁね。うちのシマで薬を流すなんて馬鹿な奴らだよ。綱吉が許すわけないのに」
「綱吉は麻薬に厳しいから」
ほんの少し、相手が笑った。
綱吉はこういった話はしないようにしてるらしいけど、生憎と僕はどんどん話すことにしている。
表部門しか関わらせてないとはいえ、一応マフィアだよ? 籠の鳥にも程があるよね。
「それで? 抱きしめてはくれないわけ?」
重ねて言えば、相手は笑った。やっぱり綱吉によく似ている。
だけど僕の頭を抱きこむような包み方は、男には絶対にできない包容力だ。
まるで赤ん坊を抱くかのように僕を抱えて、背中をあやすように撫でてくる。
笑いたくなるほどに色艶などなく、そこにあるのは純粋な温かさだ。
「お疲れ様、雲雀君」
耳元での囁きに、僕はそっと目を閉じる。
君の気持ちが判らないでもないよ。この優しさを知ったら、もう戻れないと思うから。
だとしても手放さなければいいだけの話だろう?
例え望まれようと、僕はもう逃がさない。
拒んだら咬み殺す、それだけだよ
2006年2月6日