07:秘めた香りは広く遠く





いい女は口説くのが信条の俺だが、そう出来ない女も世の中にはいる。
ドン・ボンゴレこと沢田綱吉の叔母であるがそうだ。
容姿も美しくて器量もよい。そんな女を口説けないなんて、女好きの俺としてはかなり辛い。
だが、彼女に手を出せば死を見ることは明らかだ。俺がボンゴレ付きの医者だとしても、きっと陳謝する暇も与えられないだろう。
それだけ彼女は溺愛されていた。ボンゴレ・ファミリーに、何よりそのボス、ドン・ボンゴレに。



正直俺は、この状況はちょっとばかし不味いんじゃないかと思っている。
もしもに何かあったとしたら、ボンゴレはどうなるだろう。彼女を失ったツナヨシが正気を保てるとは思えない。
支えを失くしたあいつがどう行動するか、それを考えると肝が冷える。
おそらくこの状況はリボーンでさえも不覚の事態なんだろう。
ボンゴレの奥深く、大切そうに隠されている彼女は、まさに傾国の美女に違いないのだ。
だけど大切にしすぎってのはやばいぜ。ラプンツェルは王子様に攫われるってのが定番だ。
どこの馬の骨とも知らない奴にやるくらいなら、この俺に任せる方が安心じゃないか?
いつも喉まで出掛かってくる台詞を今日も飲み込む。あぁ、こんないい女が目の前にいるってのに冗談じゃない。



「シャマルさん、今日はよろしくお願いします」
定期往診に来た俺を、は笑顔で出迎える。
「よお、相変わらず美人だな」
「あはは、ありがとうございます。シャマルさんもますます渋くなられて格好いいです」
軽く流しながらも、その耳はうっすらと赤く染まっている。それを隠すように先を歩く彼女の髪を、気づかれないように一房掴んだ。
そして俺は、柄じゃないが王子様のごとく口付けを落とす。



物語の結末はハッピーエンドが相場だぜ。
なぁ、ボンゴレ?





姫が望んで捕らわれていることを、知らないわけではないけれど
2006年1月28日