ワンダーワールド・ワンダーデイズ(1)
一年の一学期に発刊された本は、ファンタジー。読者の反応を見ようという意図が感じられ、小手調べといった印象の万人向けの話。一年の二学期に発刊された本は、おそらく純文学に分類されるだろう「金曜五時の美食家」。何をとち狂ったのか、一冊目の真逆をいった読む人間を選ぶ問題作だ。一年の三学期に発刊された本は、猟奇的要素を含んだ「怪談学園」。一冊目と二冊目の中間に位置し、ホラーではあるが娯楽小説とも言える。二年の一学期・二学期・三学期と年間を通して発刊されたのは、恋愛小説「そこにいるひと」。ありふれた男女の在り様だが、だからこそ逆にすべての読み手に深く響く。文化祭で販売された本は、二年のときはSF。落ち着いていて独自の世界観を確立し、微細まで入り組んだストーリーは、いっそ貫禄さえ感じさせた。そして、一年の文化祭で販売された本は。
「・・・・・・ふん」
鼻で笑って、文庫サイズの本をテーブルに落とした。タイトルは「ワンダーワールド・ワンダーデイズ」。ジャンルで言うなら大衆小説に限りなく近い哲学書であり、著者は。シンプルに装丁された表紙を、跡部は冷めた目で見下ろした。
一年の文化祭で発売。一冊800円、50部完売。
2010年5月9日