の騒動があり、それでも都大会は始まり、五月になれば中間テストや球技大会と行事が目白押しでやってくる。
けれど二年生にとって一番楽しみなのは、紛れもない一つだ。

「ジロー。同じ部屋になろう。っていうかなってくれ」

かなり切羽詰ったの言葉に、ジローは笑って頷いた。
二人の手には、『修学旅行のしおり』と書かれた分厚い冊子が握られている。





49:楽しみの架け橋





ー! でもってジロー!」
昼休みではなく、普通の休み時間に、めずらしく教室を訪れたのは向日だった。
彼に連れて来られたのか、後ろからは忍足がゆっくりとした歩みで扉をくぐってくる。
向日の手にもジローやと同じように『修学旅行のしおり』が握られている。
きつく握り締められて、配られた今日からすでに皺が出来ているのは、楽しみの度合いでご愛嬌だ。
「なぁなぁ、修学旅行で班一緒に組もうぜ!」
「クラスが違うてもええっちゅうし、どうや?」
「俺はいいよ。喜んで」
「俺もー」
ついさっき、一時間のホームルームを使って修学旅行についての説明がされた。
シンガポール&タイ、6泊7日の旅。
ヨーロッパでないのは、おそらく夏休みにある姉妹校研修旅行を考えてのことだろう。
6泊7日という他校に比べての長期、そしてすべてが有名ホテルに宿泊というのは、流石氷帝といったところか。
「班は四人から六人だから、後は宍戸と跡部も入れてー」
配られた班員表に勝手に二人の名を書き込もうとする向日に、は一応待ったをかける。
「・・・・・・勝手に決めていいのか?」
「いーっていーって」
「せやけど跡部のヤツは新しいカノジョと班組むんやないか?」
「―――誰が女なんかと組むか」
降ってきた不遜な声に忍足は片口で笑い、他の三人は顔を上げた。
見ればそこには仏頂面を前面に押し出した話題の主がいて。
「あー跡部だ。でもって宍戸も」
「てめぇら、勝手に決めてんじゃねーよ」
宍戸が長い髪を手で撫で付けて、呆れたように言う。
「じゃあ宍戸は抜ける?」
「・・・・・・別に、抜けねーけど」
「素直じゃねーの」
笑いながら、向日はペンでしっかりと宍戸の名を書き込んだ。
残っている枠は、あと一つ。
「で、跡部はどないするん?」
ニヤニヤと笑いながら尋ねる忍足は、すでに返事など決めてかかっているのだろう。
跡部もそれを分かっているからこそ顔を歪め、けれど苦々しげに。
「・・・・・・・・・四六時中オンナといるよりかは、おまえらの方がマシだ」
ひねくれた言葉に、五人は楽しげに笑った。

まだ三ヶ月以上も先のことなのに、今から楽しみで堪らない。
浮き足立ってくる気配に、誰もが胸を高鳴らせている。






2006年10月20日