一年生の本入部が決まり、すぐさまグレードが行われることになった。
各軍の中でブロックが組まれ、選ばれし勝者を決めていく。
以前はと向日が同じブロックだったが、今回はジローを含めて三人ともバラバラだった。
跡部たち正レギュラーは、迎え撃つための準備をして。
強者を決める戦いが始まる。
42:挑戦権
「、負けんなー!」
「がんばれ!」
今日の分の試合を終えてギャラリーに回っている友人たちの応援をバックに、はラケットを振り切る。
ライン上を確実に狙うコントロールは、本当に汗水流して体得したものだ。
だからこそ譲れない武器だし、誇ることの出来る自信。
―――負けない。
強い意志がの中に溢れてきていた。
前回のグレードで榊に教えられてから、はひたすら学んできた。
自らのラケットやシューズを変えるだけじゃなく、フォームも負担の少ない基本的なものに。
ゲームメイクはいろいろなプレイヤーの試合を見て研究し、自らのスタイルに合ったものを選んで。
どうすれば対等の勝負に持ち込めるか。自分よりも相手の体力を多く削らせ、イーブンにすることが出来るか。
試合運びを考えるのは難しいけれど楽しかった。
どんどんアイデアが浮かんできて、それを試したいと思った。試せるだけの技術を身につけたいと思った。
だからこの四ヶ月、は必死で練習してきた。
すべては強くなるため。
そしてその努力が、望む未来に繋がる。
「ゲームセット! 6ゲームズ・トゥ4! ウォン・バイ・!」
コールされた勝利。そしてそれはが準レギュラーへの挑戦権を得たことを宣言した。
「―――った!」
ぐっとラケットを握る手を強めて、はガッツポーズをする。
流れ落ちてくる汗も今はただ喜びを強めるだけでしかない。
相手と審判に握手を求めてから、コートを出る。
すぐ近くのフェンスで観戦していたジローと向日に片手を挙げて、パンッと良い音を立ててハイタッチを交わした。
「よっしゃ! これで俺ら三人とも準レギュに挑戦だぜ!」
まるで自分の勝利のように喜んでくれる向日に、も笑顔全開で頷く。
ジローも興奮のためか頬を高潮させて、いつになくハイテンションだ。
「明日準レギュに挑戦して、でもって勝てば俺たちも準レギュになれるし! そうすれば夏の都大会には出場できるよ!」
「でもってさらに強くなって、次は―――」
意志を持って言葉を止め、視線を鋭くしてコートの対面を睨む。
・向日・ジローから、コートを挟んで反対側。
それぞれがリラックスして、けれど隙無く立つ様は氷帝テニス部員の目標。
跡部・忍足・宍戸が向けられる視線に気づいたのか、振り返って。
・・・・・・・・・笑う。
冷ややかな決意
上を目指す熱意
氷帝にいる限り上を
挑むのは、義務だ
「・・・・・・絶対に勝とうな」
の言葉に向日とジローは無言で頷いた。
正レギュラーになるために明日、準レギュラーを引き摺り下ろす。
2005年6月4日