は話した。
小学生のときに、大会で榊に出会ったこと。
そのときにかけられた言葉が心に響いて、榊の下でテニスをしたいと思ったこと。
そのために男装して氷帝の入学試験を受けたこと。
本当はアメリカ帰りではないということ。
口にすればするだけ自分のついてきた嘘の数に気づかされ、は膝の上で拳を握り締めた。
ジローは、ただ黙ってその告白を聞いていた。





12:Top Secret





ジローが、について――――――について気づいたのは、本当に偶然だった。
たまたま彼のマンションを訪れたときに抱いた、微かな疑惑。
それは日を追うごとに大きく膨れ上がり、ジローの中で確固とした形になっていった。
けれど、は紛れもない友達だから。
だから何も言わなかった。
彼のテニスに懸ける思いは真剣に部活に打ち込んでいる姿を見ていれば分かるから。
だから、誰にも言わなかった。



俯く彼は、間違いなく少女で。
震えるその肩を守りたいと思った。



「・・・・・・そっか、だからはあのときに泣いちゃったんだ」
思い返すのはある日の練習で、涙を流したのこと。
それはきっと、榊に声をかけられて嬉しかったから。
ここまでさせる理由となった榊に、褒められて嬉しかったから。
コクンと、首だけで肯定するにジローは笑って。
「俺、がテニスが好きなの知ってる。だから、きっと男のカッコしてるのにも意味があるんだと思ってたんだけど」
あのときの涙は、とても純粋で綺麗なものだったから。
「そんなに、監督のこと好きなんだ」
もう一度頷くに、やっぱり笑った。
でなければ男装までしてテニス部に入ろうだなんて思わないだろう。
子供らしい一途な思い。けれど敗れることのない固い意志。
それほどまでにに影響を与えた榊に、少しだけ悔しさが浮かんだ。
大切な友人の心を占めている存在への嫉妬。
・・・・・・・・・ジローはまだ気づいていなかったけれども。
縋り付いてくる手を嬉しいと思ってしまうほどには、彼もまた子供だった。



「・・・・・・・・・言わないで・・・・・・っ」



少女だと分かった今、の声が常よりも高く聞こえる気がする。
自分のジャージを掴んでいる手が小刻みに震えていて。
それを見て、安心させてあげたいと思う。
「おねがい、言わないで・・・・・・私、辞めたくない・・・・・・っ」
『俺』じゃなくて『私』なのが。
少年じゃなくて少女の言葉遣いが、自然に耳に馴染んでくる。
「・・・・・・おねがいっ・・・」
悲痛な叫びが。



「私・・・・・・っ・・・氷帝テニス部員でいたいの・・・・・・!」



泣かないで。ねぇ、笑って。
そんな顔をさせたくて、真実を問うたわけじゃないから。
ただ、力になれたらと思って。
もっとずっと近くに、嘘のない関係になれたらと思って。
それだけだから。



君が望むのならいくらでも共犯者になってあげる。
だから、ねぇ。



「・・・・・・の本当の名前、教えて?」



それを二人の合言葉にしよう。
僕らがこれからもずっと一緒にいられるように。





2004年5月2日