出逢いの時間
自律思考固定砲台こと律に続いて、二人目の転校生が三年E組にやってきた。堀部イトナという彼は、シロという得体の知れない保護者を引き連れていた。正確に言えば引き連れられているのはイトナだったかもしれないが、とにかく彼はやってきた。三年E組という名の暗殺教室へと。席は窓際から二列目の一番後ろ。律の隣であり、の隣でもある。
「ねぇ、イトナ君。ちょっと気になったんだけど」
壁をぶち破ってきたのに、外は雨なのに、どうして濡れていないのか。カルマの問いかけに、イトナはきょろきょろと教室内を見回した。どこか子供のような所作は、三年E組の生徒を測っていたのだと、後にカルマは気づく。イトナの視線はカルマに辿り着く前に、ふとその手前で停止した。隣の席のだ。彼女はカルマとイトナに挟まれる場所におり、その足元にはイトナが破壊した教室の壁の木屑がいくつも転がっていた。視線に気づいたが顔を上げる。長い睫毛の添えられた瞳と、イトナの感情を見せない目が合った。見つめ合っていたのはどれだけだろうか。イトナの視線が外され、彼は立ち上がる。その脚はの隣を過ぎて、まっすぐカルマへと向けられた。それは言葉すら交わさない、少年と少女の邂逅だった。
その日の放課後から、三年E組の生徒たちは、新たな気持ちで殺せんせーの暗殺と向かい合うようになる。誰にも邪魔をされたくない。自分たちの手で殺せんせーを暗殺して、いろんなことを知りたい。イトナの持つ触手は、彼らに殺せんせーの謎を突き付けると共に、決意をさせるきっかけとなった。
けれどもそんな中で、だけは異なっていた。彼女はひとり残った教室で、休学に入ってしまったイトナの机の表面をそっと撫でては微笑んだ。綺麗に、愛おしげに、その表情を歪めて微笑んだのだ。
堀部、イトナ、君。
2013年10月21日