38.明日が見えない
とりあえずお茶を命じられて、茶器を捜索。この前、秀麗ちゃんが発掘したばかりなはずなのに、すでに酒瓶に混ざり込んでるのは何故だコレ。まぁでもとにかくお茶を入れて、ついでに自家製の水饅頭なんかも添えて出してみたら、鄭州伊は微笑んでお礼を言って下さった。
「ありがとうございます。あなたが官吏ですね」
「はい。お初にお目にかかります」
「お噂はかねがね。珍しく飛翔が褒めていたものですから、一度お会いしたく思っておりました」
「余計なこと言ってんじゃねぇぞ、悠舜」
乱暴な声に遮られちゃったけれど、嬉しかったので管尚書のお皿に水饅頭をもう一つプラスしてみた。舌打ちしながらも食べてくれるよ。何気にやっぱりいい人だよ、管尚書。
鄭州伊もにっこり笑ってるし、あー・・・・・・何となく力関係が見えてきた。見えてきたよ。
「鳳珠はあなたのことを良い技師であり、見どころのある官吏だと言っていましたし、黎深もあなたのことを良い友人だと話していました」
「もったいないお言葉です」
「飛翔がこうして話し合いに同席させるとは、それほどあなたのことを見込んでいるのですよ。頑張って下さいね、官吏」
「悠舜、てめぇ」
「あなたのような酔いどれ尚書のところにこんな可愛いお嬢さんが来てくれるなんて、きっともう二度とないですよ? これくらい優しくしてあげるのは当然でしょう」
「そいつはなぁ、容姿だけなら上々だが、鳳珠やあの黎深が認めた中身をしてやがるんだぞ? そんな気遣いなんてするだけ無駄だ」
「酷い言われようですねー」
「気にすることはないですよ、官吏。飛翔の雑言はすべて愛情の裏返しですから」
「ですって、欧陽侍郎」
「迷惑なことこの上ないですね」
わぉ、鄭州伊がいると面白い風に会話が進んでくよ。やっぱり力関係は歴然だ。管尚書より鄭州伊、でもっておそらく黎深さんや黄戸部尚書よりも鄭州伊。この世代で最強のお人? 秀麗ちゃん、素晴らしい補佐をいただいてたんだね。
「まぁ、旧友との再会の挨拶はこれくらいにして。そろそろ仕事の話でも始めましょうか」
にこっと笑顔を一つ浮かべて、鄭州伊はナチュラルにビジネスモードへと移行した。あー・・・素晴らしい。実に素晴らしい。政治的手腕に長けてるよ、この人。無理だとは思うけど、いつかこういうキャリアウーマンになってみたいものです。
鄭州伊と管尚書のやり取りは実に参考になった。私もいつか秀麗ちゃんと、こんな風に話すようになるのかなぁ。
それまで彩雲国にいれればいいんだけど、さすがにこればっかりはどうにもならないしねぇ。せめて事前に帰還時期を教えてほしいよ。ねぇ、ブロッケン。
悪夢の国試組を望まれた方、こんな感じでいかがでしょう・・・?
2006年9月11日