37.雪のように溶けて消えてしまえたら
まぁ凹んでも浮上しても朝日はちゃんと昇るわけで、そうしたら一勤め人な私はちゃんとお仕事に出かけなくちゃいけないわけで。
藍邸の作りが好きじゃないらしい龍蓮は、秀麗ちゃんのお宅に行くと言って出ていった。何か、別れ際にまたチュウとかされたけど、それは深く考えないでおこう。どうせ三つ子はすでにこの状況を把握してるだろうし、藍家で血みどろの争いが起こらないことを祈るまでだよ・・・。
こうなったら開き直って悪女の道でも進もうかなぁ。今更刺し殺される心配なんてするだけ無駄だろうし、派手に人生を謳歌した方が潔いのかも。うん、帰ったらリドるんと相談しよう。悪女の道も一歩から?
そんなことを考えながら出勤したら、速攻で欧陽侍郎に呼び止められた。
「官吏、ちょっといらっしゃい」
「はい。何でしょうか、欧陽侍郎」
「茶州州牧補佐の鄭悠舜殿がいらしてます。後学のため、あなたも同席しなさい」
「はい、分かりました」
多分、秀麗ちゃんが持ち込んだ学舎の案件について煮詰めに来たんだろう。やり手と噂の鄭州伊。秀麗ちゃんの話では頼りになる優しいお方と聞いてるし、一度会ってみたかったんだよねぇ。
隣に並んで歩き出せば、斜め上からちらりと視線をよこされる。見上げればやっぱり今日も欧陽侍郎はキラキラしてる。
「何かあったのなら一人で抱え込むんじゃありませんよ。何のために私があなたを愛してると思ってるんです」
「・・・・・・ちょっと、悪女の道をいこうかなぁと」
「これ以上?」
・・・・・・何か、とんでもないことを言われた気がする。気のせいですか? ねぇ、欧陽侍郎。柄にもなく脳内で熟考しているうちに管尚書の執務室についてしまって、ノックの後、扉が開かれる。
管尚書の向かいで振り返ったのは、秀麗ちゃんの話通り、優しげな顔立ちの男性だった。
なのに一筋縄ではいかなそうだと思ったのは何故だコレ。
欧陽侍郎の発言に、魔女っ子200のダメージ!
2006年9月11日