27.温もりは一つしか知らない
楸瑛に紹介された少女は、先に与えられていた情報のせいか、『女』という感じはしなかった。
振る舞われた料理は秀麗のものほど家庭的ではなく、どこか異国的な初めて食すようなものばかりだったが、けれどどれも美味しかった。
会話は軽快だけれどうるさくはなく、頭の回転が早いのだろう。どちらかと言えば落ち着いた印象を与えられて不思議に思った覚えがある。
容姿は特別優れているというわけではないが、ふとした仕草は洗練されており、垣間見た表情に息を飲んだのも一度や二度ではない。奥の深い少女だと、絳攸は思った。
あえて難を言うのなら自分の養い親と年の離れた友情を育んでいるくらいだと思っていた。
だから何気なく触れたとき、その手首の細さに、くにゃりとした柔らかさに、ほのかな温かさに。
ぞくりと、全身が粟立った。
戸惑ったように少女が笑う。困ったように顰められた眉が、やけに目に焼きついて離れない。
うるさい心臓に、彼は己の在りかを知った。
出会い編はそのうち書きます。
2006年9月2日