24.繰り返しましょう、貴方が分かってくれるまで





上品な香のしたためられている手紙の内容は、要約すればこうだ。
『今夜中に会いに来なかったら、てめーのせいだって遺書を書いて自殺してやる!』
あらまぁ見事な脅迫文。警察は果たして動いてくれるのかしら。どう思います、楸瑛さん?



読み終えた楸瑛さんは、それはそれは興味なさ気なうんざりとした顔で、文をぽいっと箱に戻した。
「気にすることはない。どうせ自ら命を絶つなんてことは出来ないだろう」
「つまり、行かれる気はないと?」
「これが愛しい女性なら話は別だけどね。あいにくと彼女は私の特別というわけではない」
さらっと言っちゃう楸瑛さんは、やっぱり女の敵だと思う。本命に振り向いてもらうために女遊びを繰り返すなんて、女性からしてみれば笑って殴り飛ばすような代物だってことにどうして気づかないのかなぁ。本命に対してのみの対応ギャップを狙ってるとしても、逆効果にしか見えませんよ、ええ。
「まったく、これだから男ってのは・・・・・・」
胡蝶さんも綺麗な眉を顰めていらっしゃる。本当にしょうがないですよねぇ、このお方。
「楸瑛さん。所詮遊びなら、命を懸けさせるまで惚れさせるのは止めた方がいいですよ」
「私がそうさせているんじゃないよ。みんな、彼女たちが好きで命を懸けてくるんだ」
「あははー甲斐性のない男ですねぇ。そんな言い訳、十歳以下の児童しかしませんって。本気にならないって分かってるんでしたら、相手にもそれなりの対応を取るのが遊び人ってものでしょう」
「おや。語るね、殿」
「ええ、魔女っ子は女の子の味方なのです。でもって毎月こんな騒動で睡眠時間を削っている藍邸家人さんたちの味方なのです。というわけで、今後の私たち藍邸在住の者と、可愛い女性方のため、楸瑛さんには制裁を加えたいと思います」
笑顔で述べた私に、楸瑛さんはぎょっとした。すでに三ヶ月は花街に入れなさそうな身だしねぇ。これ以上何が起こるのかって? そりゃあ目には目を、歯には歯を。恋には恋を、ダメージにはダメージを!



楸瑛さん、これであなたの女性への扱いが少しは改善されるといいのですけれど。
でも何度でも制裁は準備しますから、どうぞ遠慮なくおっしゃって下さいね、うん。





今更ですが、久堂は楸瑛さんの憧れの君が珠翠さん説を推奨してます。
2006年8月31日