18.アイデンティティ捜索願





工部での仕事は、基本的に定時で終わる。というか定時で終わらせる。管尚書が管尚書だし、欧陽侍郎が欧陽侍郎だし。与えられた仕事をきちっと終わらせれば、基本的に帰宅してオッケーなのだ。まるで放し飼いの羊のよう。うーん、いいねぇ、万歳だよ工部。
吏部なんか、黎深さんの仕事が李侍郎に落ちて、李侍郎の仕事がさらにその下の部下に落ちて、落ちて落ちて結局は今一番下っ端の珀明君のところに山となってるみたいだし。あー・・・手伝ってあげたいけど部署が違うしねぇ。今度邵可さん人形で黎深さんを釣ってみるから、それまで頑張って、珀明君。
まぁそんな感じで私は今日も定時で仕事を終え、先輩官吏さんたちから「ずりーぞ」とか「仕事代わってくれ!」とか言われ、ひらひらとアドバイスと共に手を振って、でもって厨房に顔を出してから貴陽藍邸に帰宅した。時間的には夜七時くらい? 健康的なご帰宅です。
楸瑛さんはいつものごとくいないので、侍女さんと他愛ない話をしながら夕食を頂いた。そしてお風呂に入って、魔女っ子道具を介して龍蓮とほのぼの会話して、明日の仕事の準備をして、さぁそろそろ寝ようかな、と思ってたところにそれは来た。

「これを・・・藍邸の主様に! どうか、どうか今すぐにお読み下さいとのことですっ!」

日付変更の一時間前くらいにやって来た使者さんは、そう言って一つの書簡を置いていった。
え、ちょっと、藍邸の主様、どこにいらっしゃるんですか? むしろそれは楸瑛さんじゃなくて三つ子のことだったりするんでしょうか?





『楸瑛さんと仲良くなろう』またの名を『楸瑛さんいじめ計画』発動。
2006年8月29日