15.日溜りで待ち合わせ





昼食は食堂で食べてもいいし、そこで貰ったお弁当を庭や執務室で食べてもいいらしい。見習い二ヶ月厨房のおかげで、やけに愛の詰まった豪華弁当を受け取って、手を振られながら食堂を後にする。働き始めてから三日に一度は、情報交換も兼ねて珀明君と食べてるんだよね。今日はいいお天気なので、庭園の李の木の下で待ち合わせ。
「本っ当に素晴らしい方だ、絳攸様は! あの膨大な量の仕事を素早く適確にこなしていくお姿! まさに僕の目標そのものだ!」
「吏部って厳しいらしいねぇ。紅吏部尚書が仕事しないから、李侍郎に全部回ってくって評判だよ」
「だけどそれすらこなしてしまうから、さすが絳攸様!」
珀明君は箸を握って力説するけど、この会話も何回交わしたことか。あ、この漬物、ちょっと辛い。もうちょっと甘い方が個人的に好みだなぁ。
「珀明君、漬物あげる」
「好き嫌いするな。おまえの方はどうなんだ?」
「案件を任されたよ。今度藍州に架ける、新しい橋。日程から技術者確保から予算ゲットまで全部やってみろって言われちゃった」
「・・・・・・は?」
きょとんとしてるのか唖然としてるのか、とりあえず珀明君が呆けている間に漬物をプレゼントし、代わりに玉子焼きを一つ頂く。
「おい、勝手に取るな」
「ありがとう、美味しかったよ」
「というか、今のは本当か? 本当なら大変なことじゃないか」
「管尚書&欧陽侍郎曰く、実力を見極めるためのいじめらしいよ。指示受けて三日目になるんだけど、今のところ一応順調。設計者に会いに行ったら、私のためだけに無償で橋を作るって言われちゃった」
ちなみに魔法は使ってません。脅してないし、腕力なんてもっての外だよ。ただちょっとお茶を飲んでお話をして、わしの跡を継いでくれとか言われたくらい。一緒に設計図を構築したのが悪かったのかな。
「後は戸部で予算を出してもらうだけ。黄尚書ってかなりの辣腕家って聞いてるし、実は楽しみで予算を後回しにしてたんだよね」
「・・・・・・あの黄尚書相手にそんなこと言うのはおまえくらいだぞ」
「えー多分、欧陽侍郎も言うと思うよ。あの人はかなりの黄尚書ファンだし」
「まぁいい。何かあったら言え。力になれればなってやる」
「うん。ありがとう、珀明君」
じゃあデザートの林檎をちょうだい。そう言ったら駄目だと言われたけれど、結局は茄子のおひたしと交換してくれた。珀明君は美少年な上にいい人だよ!

さて、栄養つけたし気力も補充したし、ついにお待ちかねの戸部へ向かうとしますか。
欧陽侍郎ご推薦のご尊顔、拝見させて下さいね。黄戸部尚書!





魔女っ子&珀明君、秀麗ちゃん&影月君。
2006年8月25日