13.戯曲の中でだけの関係
貴陽での私は、藍邸にて寝起きしている。姓は違うけど三つ子当主の寵姫ってことは知られてるらしく、家人の皆さんは本当に良くしてくれている。至れり尽くせりお嬢様だよ。この世界に来て本当に良かったなぁ。
「おはよう、殿」
「おはようございます、楸瑛さん」
私が来てからというものの、楸瑛さんは出来る限り朝食を一緒に取ることにしてるらしい。多分、情報収集や見張りとか、いろいろ兼ねているんだろう。苦労をおかけして申し訳ない。朝帰りを咎めてないし、それでおあいこということでどうかお一つ。
「仕事の方はどうだい? 工部尚書は癖のある人物らしいけど」
「あぁもう全然バッチリです。管尚書は確かにお酒を浴びるように飲む方ですけど、仕事の腕は確かですし。欧陽侍郎はキラキラしてて目の保養ですし、毎日楽しく働かせてもらってます」
「・・・・・・小耳に挟んだのだけれど、その二人と飲み比べをしたというのは」
「負けた方のおごりだったので、私に害はありませんでした」
にっこり笑ったのに、何故か楸瑛さんは肩を落とされた。あ、このおかゆ美味しい。後で作り方を聞いておこう。
「一応基本的な書簡処理の仕方は教わって、今日は管尚書の執務室に伺うよう言われています」
「そう・・・・・・まぁ、君なら大丈夫だろうとは思うけど、今中央にいる女官吏は君だけだし、十分に気をつけるんだよ」
「あはは、左右羽林軍大将軍とやり合った私に、今更喧嘩を売ってくるような方はいないですよ」
「確かにね。あれ以来大将軍方も、君を羽林軍に引き入れたくて仕方ないらしい」
「腕が鈍らないように、暇が出来たらお伺いします」
「伝えておくよ」
茶器を置いて、楸瑛さんが微笑む。下っ端官吏の私は、楸瑛さんのようにのんびりはしていられない。さくさくっと支度を整えた私を、楸瑛さんは麗しい笑顔で見送って下さった。
「行っておいで、殿」
「行って参ります、楸瑛さん」
てくてくと歩いて宮城へ向かう足取りは程よく軽い。
茶州に向かってる秀麗ちゃん&影月君は元気かなぁ。おかしなことに巻き込まれてないと良いけれど。
スリザリン系な次男に絡まれてますよ。
2006年8月25日