07.倍返しにしてあげる、覚悟なさい
秀麗ちゃんが礼部の官吏たちに泥を投げつけられたらしい。
白い進士服が茶色とまだらになっている。綺麗な髪もぼろぼろ。だけど決して泣こうとしない秀麗ちゃんは、本当にそこらへんの男より気概があって強くて優しい。彩雲国に来て、出会えてよかったなぁって本当に思う。
「どうしよう。私、礼部を丸ごと潰したいよ」
「だ、駄目よ、! そんなことしちゃ駄目っ!」
「じゃあ料理に真面目に毒を混ぜるとか。大丈夫、足はつかないようにするから。もちろん秀麗ちゃんに迷惑はかけないよ」
「それも駄目! 私ならっ・・・・・・大丈夫だから!」
嘘、と否定するのは簡単だけど、秀麗ちゃんの誇りに敬意を表してそれはしない。だから代わりに魔法をかけるよ。三つ子に使うなって言われてるけど、こういうときに使わないでどうするの。
「秀麗ちゃん、目を閉じて?」
怪訝そうな顔をする秀麗ちゃんに、にっこり笑いかける。おずおずとまぶたを下ろした彼女の額に、私の額をそっと合わせた。口の中で呟いた呪文は、彼女の服や髪を新品同様に変えていく。
目を開けて驚いている秀麗ちゃんに、私はもう一度笑いかけた。
「これくらいしか出来なくてごめんね」
でも私は、ずっと秀麗ちゃんの味方で仲間だよ。そう言ったら秀麗ちゃんはまた泣きそうな顔になって、ぎゅって私に抱きついてきた。
影月君が来て、秀麗ちゃんの背に手を寄せる。僕も味方で仲間です。彼のその言葉に、秀麗ちゃんが泣きそうな顔で笑った。
完全犯罪はお手の物です。
2006年8月21日