05.御用件をお伺い致しましょうか





彩雲国の政治は男性のもの。今年史上初めて秀麗ちゃんと私という女性官吏が誕生したけど、それに対する嫌がらせといったら、それは笑っちゃうほどのものだった。
レイブンクロー&スリザリン所属から言わせてもらえば、子供の遊びにも程があるよ。一度リドるんを講師にレンタルしましょうか? 一時間金一両でお貸ししますよ?
「まったく、何で女なんかがこの朝廷に」
「女など家で男を待っていればいいものを」
「神聖なる政治が汚されて堪らん」
笑える。いっそ笑える。えーちょっと楽しすぎるんだけど。私の世界でそんなこと言ったら呼び出し袋叩き間違いないよ。やっぱり世界によって価値観って違うんだなぁ。というか文化と発展の違いかな。
そんなことを考えながら、積み重なる皿を洗い続ける。厨房まで嘲笑しに来るんだから、如何に官吏が暇かがよく分かるね。
「はい、こっち終わりましたー」
「じゃあ次、これを洗え」
「はい」
指示された鍋をさくっと洗う。頑固な汚れも大丈夫。伊達に主婦リドるんを間近に見てきたわけじゃありませんから。
「はい、こっち終わりましたー」
「・・・・・・こっちに来て野菜の切り出しをしろ」
「はい」
私に皿を洗わせていた料理人さんは、眉を顰めて指示を出す。ふっ・・・・・・何か本気で楽しくなってきた。こうなったら神技みじん切りでも披露しようじゃないですか。ちょっと毒が入ったとしても、それはまぁご愛敬で。無能官吏を狙いますからノープロブレム。
「おお・・・っ!」
「すごい!」
「何て速さだ・・・!」
周囲の料理人さんたちが感嘆してる。ちなみに魔法は使ってません。これでも一児の母だしね。拾った子供もたくさんいるし、家事はリドるんに任せてるけど、自分でもそれなりに出来るんですよー。
「・・・・・・次、鶏肉の甘辛炒めを作ってみろ」
「はい」
鳥を丸ごと手渡されたよ。すでに息がないのがせめてもの救いか? とりあえず毛をむしって捌くところから始めないと。
っていうか私、政治家になったんだよねぇ。料理人になった覚えはないんだけれど。鶏肉の甘辛炒めを完成させた後、さらに高難度の料理を命じられて、思わず自分の決断を振り返っちゃったよ。
この分なら様子見の二ヶ月で、立派な宮廷料理人になれること間違いなしだね!





結構楽しんでいるようです。
2006年8月21日