動物の姿って楽でいい。縁側でお昼寝してたオルガとスティング、君たちの気持ちがよく分かったよ。こりゃ毛皮干しもしたくなるって!
しかも今は雲雀さんのお宅で毎日のように洗われてるし。何このシャンプー! ヒョウ専用って、どこで手に入れて来たんですか雲雀さん! でもってトリートメントまであるのが実にお見事!
ラベルは手書きっぽいし、作らせたのかな。さすが雲雀恭弥さん。並盛ヒエラルキーのトップは伊達じゃないね。
出される食事は和懐石だし、飼われて三日目には専用ベッドも用意されたし! こんなに至れり尽くせりでいいのかなぁ。上げ膳据え膳ご貴族暮らし。あぁでも家でもリドるんが尽くしてくれているから、どっちにせよ素晴らしい生活には違いないか。
抱き上げて撫でてくれる手は優しいし、綺麗なお顔は実に好み。エンジェル恭弥様ばんざーいとか思っていたら。
「クフフ・・・・・・これはこれは、美人さんな猫ですねぇ」
何か、目をつけられた。路地裏にて二度目のナンパ?
その右目の六はコンタクトなの? ねぇ、怪しげなお兄さん。
路地裏でにゃあと鳴け(六道さん編)
慣れとは非常に恐ろしいもので、私は誰かと初めて会った際に、その人をホグワーツの寮で分類する癖がついてしまっている。それでいくと雲雀さんは、我らがレイブンクロー。賢くずるく、隠れた刺が実にお似合い。
そして今目の前にいる六目さんは、間違いなくスリザリンだ。しかも日本校じゃなくて本校の。
きゃーすてきー! わーっ! 会いたくない系ナンバーワンだよ! でもって不覚にも気に入られる率もナンバーワン!
いやいや人の好みは千差万別。この人もリドるんやマルフォイ父子のような趣味をしているとは限らない。なので今はおとなしくしとこう。うん、可愛い猫の振りですにゃー。
「血のように紅い目・・・・・・綺麗ですね、まるでルビーのようだ」
この人の職業は詩人だろうか。着ている制服はコスプレなの? でないと「血のように紅い」なんて表現は普通しないよ。「赤い」じゃなくて「紅い」だったよ!
「見るからに艶のある毛並み。触ってもいいですか?」
動物に許可を取った。礼儀正しい人だなぁ。了解の意味を込めて近寄ってみれば、六目さんは膝を折って手を伸ばしてくる。雲雀さんみたいな手。何かしら握ることの多い、職人の手だ。あわよくばそれがトンファーじゃないと良いのだけれど。
下から手を伸ばし、淡く首あたりをくすぐる。出来るなぁ、六目さん。さては身近に動物がいらっしゃる?
「ふわふわですねぇ。最高級の手触り。やはりあなたは誰かの飼い猫なのですね」
飼い猫じゃありません、飼いヒョウです。今は雲雀さん家のエンジェル恭弥様にお世話して頂いてます。
「あぁ、すみません。猫ではなくヒョウなんですね。僕としたことが失礼しました」
この人、言葉が通じてるよ・・・! いやそれはないとしても見事な目だよ! その六コンタクト、どこで売ってるんですか?
「僕は六道骸といいます」
ほほう。六道だから目が六なのか、目が六だから六道なのか。どちらにせよ六道さんは、私を撫で撫でしつつ話を続ける。
「あなたのお名前は何というのですか? ・・・・・・あぁ、さんとおっしゃるのですね」
私の首輪のネームタグを裏返して六道さんは確認する。ちなみにこれには雲雀さんの電話番号も書いてある。保健所対策、飼いヒョウですよー。
「僕は隣町に越してきたばかりなんです。黒曜中の三年になります。この制服、素敵でしょう?」
ええ、個性的でお似合いです。女子の制服も是非見てみたい。
「本当は並盛に用事があったんですけれど、並盛中の制服はあまり好みじゃなくて」
それは良かった。六道さんと雲雀さんは絶対合わない気がするし、バトルして美形さんの顔に無駄な傷をつけずに済んだよ。っていうか六道さんが「制服」って言うと、「征服」に聞こえるのはどうしてだろう。やはりスリザリンが原因か?
「それにしても残念です。さんがすでに誰かに飼われているなんて」
私もびっくりですよー。いつもは拾って飼う側なんで、飼われるのは初体験。
「今の飼い主を捨てて僕のところに来ませんか? 待遇は保証しますよ」
つまりそれは毎日シャンプーに三食和懐石、羽毛ベッドに美形飼い主、それ以上の待遇だと? うーん、さすがに難しいんじゃないですか、六道さん。私は雲雀さんで十分すぎるほど上げ据え膳です。なのでお断りですにゃー。
「そうですか、それは残念」
整った顔を曇らせた後で、六道さんはにっこりと笑顔になった。うわぁ、スリザリンの気配がするよ!
「じゃあ強制的に、僕のものになってもらいましょう」
そう言って取り出したるはフォーク、じゃなくて先が三つの槍みたいな不思議武器。六道さん、あなたコレをどこから取り出したんですか! その制服は四次元ポケット付きなんですか!?
「大丈夫ですよ。ちょっとチクっとするだけですから」
にこにこ笑顔でにじり寄ってくる六道さんに、私も毛を逆立てて応戦体勢を取る。
あぁやっぱりスリザリン属性なんて、とんでもない人ばっかりだよ・・・・・・!
ご帰宅の約束時刻、18時三分前にバイクのところまで駆けていくと、すでに雲雀さんがいらっしゃってた。お待たせして申し訳ない。しかも雲雀さんだよ。ごめんなさいが更に二倍。
「ずいぶん埃っぽいね。一体どこに行ってたの?」
路地裏ですにゃー。スリザリン属性な方に絡まれていましたにゃー。
「別にいいけど。怪我なんてしてないだろうね?」
それは大丈夫ですにゃー。フォーク武器はさくっと交わして、追っ手も振り切って来ましたにゃー。
「ふぅん。じゃあさっさと帰るよ」
そう言って雲雀さんは私を後部座席に乗せて、バイクのエンジンをふかし始めた。あぁ夕焼けが綺麗なオレンジ。六道さんの目のような色。あれこそまさに「血のような紅」だよねぇ。うん、まぁ何はともあれ。
六道さんのほっぺに食らわせた肉球パンチ痕が、一秒でも早く消えますように。
スリザリンは美形が多いけど、やっぱりどうしようもない人が多いなぁ。そして相変わらず気に入られ率はナンバーワンをキープ中。
雲雀さんのお背中で、のんびりそんなことを実感してみた。
つーか六道さんの右目、あれ何だろ。不破と一緒に解剖してみたいなぁ。
千種、犬! 素晴らしいヒョウがいましたよ! 見つけ次第捕獲です!
2006年7月14日