最初に言っておきますが、私にも一応常識というものはあるわけですよ。
うーん、何だか光宏とかには「嘘だー!」とか言われる気もしなくもないけど、でもやっぱり一応あるわけで。
・・・・・・・・・一応って、二回繰り返すとちょっと嘘っぽい?
うん、でもまぁいいや。本題はそれじゃないし。
ですからね、この状況というのはちょっと首を傾げても仕方ないと思いません?
「不倫するには、あまりにも私にリスクが大きいと思うのですけれど」
社会的立場とか、消され方とか、その他色々な面を考慮して。
イタイケな小羊ぶって訴えたのに、目の前のプラチナブロンドの紳士は余裕で笑うし。
「私はそれでも構わないがな」
ドラコ、君はお父上ほど俺様ではないと今判ったよ。
闇宵の秘め事
ノクターン横丁をふらふら歩いていたらナンパされてしまった。
振り向けば背の高い男の人。プラチナブロンド色白の肌。
あーなるほどね、ドラコが大きくなればこのお方みたいになるわけだ。
・・・・・・・・・権力と財力のついてくる美形か。結構好みかな。まぁ性格悪いのはマイナスだけど。
「久方ぶりだな、ミス・」
「ご健勝で何よりです、ミスター・マルフォイ」
「君の活躍はドラコから聞いている。ずいぶんと寮に貢献しているようだな。同じスリザリンとして誇らしい限りだ」
「そのようなお言葉・・・ありがとうございます」
今思ったんだけど、これってちょっと悪役の上司と部下の会話みたい?
ってことは私が部下?えーえーえー。
ウェイトレスがケーキと紅茶を運んできて私の前に置いてくれる。
ちなみに頼んだ覚えはない。
ドラコパパの前にはとても濃い色をしたコーヒーが置かれて。
奢り?奢りだよね?だってナンパしてきたのはそっちだもんね?
まぁこの程度の代金なら私でも出せるだろうから、とりあえず頂くとするか。
「ところでミス・」
「何でしょうか、ミスター・マルフォイ」
今さら奢りじゃないとか言うんですか、ひょっとして。
金持ちのくせしてケチ・・・。でもそれが金持ちである秘訣でもあるのかも。
なら仕方ないか。
ドラコパパはコーヒーに一口つけて、優雅に仰った。
「君はドラコのことをどう思うかね?」
1:どうやらドラコに好かれているらしい私を牽制する。
(以下パターン)
「うちの息子を誑かすとはけしからん!」
「この金でどうか息子から離れてくれないか」(個人的にこれ大希望)
「ドラコにはもうすでに立派なお嬢さんとの縁談が」
2:将来マルフォイ家を継ぐドラコの学校での様子が聞きたい。
3:私がドラコにとって敵なのか味方なのかを判断
4:息子が褒められるのを聞きたい
5:息子が貶されるのを聞きたい
うーん、たぶん1かな。でもって手段としてはパターン2を希望。
愛と金は秤にかけることは出来ないけれど、まぁ時と場合によるでしょう。
今は愛よりも金が欲しいしね。女の子は時に摩訶不思議な生き物なのだよ。
というわけでドラコパパ、是非とも小切手でお願いします。
「私は是非とも、君にドラコの妻となってもらいたいのだが」
選択肢はどうやら6番のようでした。
うっわードラコパパ、冒険家!
ケーキを勧められて食べている間に、ドラコパパは語るように話を続ける。
「君の話はドラコから本当によく聞いている。勉強も出来、魔法の腕も申し分ない。容姿も美しいし、何よりスリザリンだ」
「ですが私はマルフォイ家に入れるような家柄ではありません」
というか、家柄どころの話じゃなかったりするんですけれど。
それに結人から『アルフォイ家は純潔至上主義だから』って聞いてるし。
(でもってその後に『も苛められないように気をつけろよ!』とまで言われたし。まぁそれは杞憂に終わったけど)
「ミス・」
ドラコパパがそのアイスブルーの瞳で私を捕らえる。
「私は君の出生を知っている」
地雷・致命傷・決定打。
なるほど、だからこういう手段に出たわけか。
いいね、ミスター・マルフォイ。嫌いじゃないな。
この人相手なら不倫しても構わないかも。
「私には確かにマグルの血が流れています」
「そして確かに魔法使いの血も流れている」
「ええ、それは否定しません」
というか本当のことを否定すると嘘ついてることになっちゃうからね。
ノラリクラリと躱すことは出来るけど、今はそうするときじゃない。
左中指の指輪を握りしめて、そして笑った。
「じゃあこれもご存知ですよね?」
ごめんね、なんて内心でニッコリ笑って。
「私に命令するなんて、そんなに死にたいんですか?」
あはは、悪いね、ドラコパパ。
結局その後はほのぼのとしたティータイムを過ごすことが出来た。
代金は予想通りドラコパパが奢ってくれたしね。万万歳!
これなら一度くらいは不倫してもいいよ。うん、でもやっぱ援交で。
お金は欲しいからね。あとは好みの問題で。
「つまり、君がドラコのことを好きになれば何も問題はないということか」
・・・・・・諦めないのか、さすがドラコパパ。
「ちなみに薬系は得意ですから、避けた方が宜しいかと」
「恋愛にそのような手段を使っても面白くないだろう。それにミス・。私の息子はそんなに魅力がないと思うかね?」
「いや、そうは思いませんけれど」
外見は美人さんだし、中身は良くも悪くもお坊ちゃまだし、レベル的にはお買い得だと思うんだよね。
ただ私が不動産に興味がないだけで。
「精々ドラコに発破をかけるとしよう。今日は楽しかった。また会える日を楽しみにしている」
「奥様にバレて修羅場とかは嫌ですよ、さすがに」
「ならば自宅へ来てもらおうか。そうすればアレも喜ぶ」
うわ、自爆。とか思いながら適当に手を振ってドラコパパと別れた。
それにしてもケーキも紅茶も美味しかった!金持ち万歳!マルフォイ家素敵!
でも結婚する気はないけどね!
とりあえずドラコパパとは仲良くなれそうな予感がする。
不倫にだけはならないように気をつけなくては。
さすがにまだ三面記事には載りたくないしね。
指輪の紅い石を一撫でしてから帰路へついた。
あーもう独身主義だって看板でも背負って歩こうかなー。
2003年11月13日