だからなんでこうなるのかまったくもって不思議なのですが。
ホグワーツの裏道は異世界への扉なんだなぁ・・・・・・。
毎度毎度遅刻しそうになって通るたびによそへ導くのは止めて欲しいよ。レポート書かされる羽目になるんだからさ。
まぁS氏に会わないっぽいだけ良いといたしますか。
ねぇ、そう思いません?そこの丸眼鏡をかけた広辞苑さん。



「ちゃうわ、俺は広辞苑やのうて六法全書や! 間違えんといてや、お嬢さん」



ハイ、結局どっちも重いので異議は却下いたします。





魔女と俺様(笛ポタ番外編)





この前は金色だったから、今度は(めちゃくちゃ自己主張して金色に輝きすぎるそれをシカトして)紫色のブロックをつついてみた、ら。
なーんといきなり知らないお城の中に放り込まれたんですけれど。
それも日本城とかじゃなくって、ホグワーツと同じような西洋のお城系。そしてどことなく暗い系。
うーん、どうするべきか。この次の授業は魔法薬学だったからちゃんと出席したかったのになぁ。
異世界に巻き込まれて魔法薬学の授業が受けれなかったなんて知られたら、きっと本校のスネイプ先生がお嘆きになられるよ。
これでも良い子してるつもりだからね、私的には。うん。
でも光宏や柾輝は「良い子じゃないじゃん、全然」って言って笑うんだよね。失礼だなぁ二人とも。
私はこんなに良い子じゃん。勉強もまじめにやってるし、寮の得点にもちょこっと貢献してるし、減点はされないように頑張ってるし。
こんなに尽くしてるのにどこが悪い子なのさ。ぶーぶー。
「―――――で、考えはまとまったん?」
「とりあえず帰ることに決めました。それじゃ失礼します」
廊下のど真ん中に居座っている分厚い本に頭を下げて城から出ようと扉を開けた。



「ちゅうか自分、全然驚かへんのやな。普通六法全書が喋ったら『キャアッ!』って言って悲鳴上げるもんやろ」
つまらへんわ、その反応、と言いながら六法全書さんが嘆く。
その拍子にページがパラパラとめくれてる。
「いや、一見無生物に見えるものが喋るのには見慣れているので」
寮の入り口で煙草ふかしている深山木秋さんや、組み分けのときにセクハラした帽子なんかが良い例だね。
ホグワーツには不思議が一杯。そして何やらこのお城にも不思議が一杯?
だってテーブルの上でポットさんが軽やかにダンスを踊りながら紅茶を入れてくれてるし。至れり尽くせりありがとう。
あーこのお城の紅茶も美味しいねぇ。お菓子もホグワーツに負けず劣らず美味しいし。
何か? この手の魔法のお城は食べ物が美味しいって決まりでもあるの? そしてそれは六法全書とかに載ってるの?
そのページ、めくってみてもいいかなー。やっぱめくったらセクハラになるのかなー。ちょっと疑問。
――――――――――というか。
「じゃ、私は授業がありますのでこれで失礼しますね。ごちそうさまでした」
美味しいティータイムは過ごせたから満足だし、そろそろ本業に戻らねば。
前例と同じで時間軸が元の世界と違うかもしれないし。浦島太郎ってのはきっと無理。行方不明の捜索願が警察に出されてるよ。
そうしたらテレビに顔写真とか映っちゃうのかな。やだな、一番普通に見えるのを決めておけばよかった。
どうか変な写真が使われてませんように。
「あぁっ待ってくださいっ! お願いします帰らないで下さい!」
「つーか忍足! てめぇ遊んでねぇでちゃんと説明くらいしやがれ!!」
立ち上がって歩き出したら玄関へと向かう先をキャンプ用ランプに遮られて。
振り向けば六法全書さんに絡んでいる箒さんがいて。
あの箒に乗ってホグワーツまで帰れないかなぁ。このさいニンバスの最新型じゃなくても全然オッケーだからさ。
「なんや焦るなって、宍戸も鳳も。まだまだ時間はあるんやし」
「いやないんで。私は学生ですから本業に精を出さなくてはいけないのです。それでは」
「あぁぁぁぁぁ! 待って!」
ランプさんがぴょんぴょん飛びながら私の行く先を塞いでく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「間違って踏みそうなんですけど、いいですか?」
そう言ったらランプさんはビクゥッと身をすくめて、それでも廊下の真ん中に立ちふさがった。
「どうしても帰ると言うなら、俺を踏み潰してから行ってくださいっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は友が止めるのを振り切って出て行く冒険家か?それとも恋人を捨てて出て行く男か?
どっちにしろ碌でもないな。ということはどっちでもいいか。
フルフル震えながら私を見上げるランプさん。
とりあえずソレを持ち上げてみた。
「おなか減ったんですけど、ご飯とかあります?」
そう言ったらランプさんは一層輝きを増して、コクコクと頷いて返事をした。



あ、ここのご飯マジで美味い。えーちょっとホグワーツと張るって。スゴイな、西洋城。
「で? つまりは私にここのご主人を元に戻して欲しい、と」
食事しながら聞いた話を簡略化して言うとランプさんと箒さんはコクコクと頷いた。
聞いたところによるとランプさんの名前は鳳長太郎さん。箒さんは宍戸亮さんというらしい。
ちなみにさっきの丸眼鏡をかけた六法全書は忍足侑士さん。
物に苗字と名前がついてるなんて素晴らしいね。きっと戸籍や選挙権まであるのかも。それって人口多くなりすぎないか?
まーいいや、それは別に。私はこの世界の住人じゃないし。・・・・・・というわけで。
「無理ですね」
一言でお断りしたら目の前のランプさんと箒さんは落ち込んで肩を落とした。
六法全書さんは「そりゃそうやろな」と頷いている。この人は話の分かる人らしい。よかったよかった。
「でも、でもでもでも、俺たちにとってはさんが最後の頼みの綱なんです! お願いします!」
なんで最後なのさ。ランプさん、そんなに必死になる理由は一体何なの。
「あと少しで猶予の時間が終わるんだ。その間に戻れないとアイツは一生あの姿のままに・・・・・・・・・っ」
その台詞の箒さんが『俺たちも一生このままだ・・・・・・』ってつぶやいた。
自分のことより主のことを先に言うとは素晴らしい人材。ここの城主は中々に人望に厚い人なのかも。
でも優雅にくつろいでる六法全書さんを見る限りそうは思えないんだよねー。
だってこの人、のんびり紅茶飲んでるよ。そんなことすると紙に染み込んで変色するんじゃないの?まぁ読めればいいけど。
「というか、ご主人様も何か物質に変わってるわけ?」
ここにいる六法全書さんや箒さん、ランプさんのように。
そう聞いたら何やらお三方は黙ってしまわれた。沈黙が響くけど、踊りながら紅茶を入れてるポットさんがいるから結構にぎやかだったりして。
「・・・・・・西の端のお部屋に、いらっしゃいます・・・・・・・・・」
ランプさんが小さく小さくつぶやいた。



では、一応会いに行ってみますか。





2003年6月7日