100点満点中15点もらえればいい方でしょう?
むしろ甘いね。甘すぎる採点だよ。ここはもっと厳しくいかなくちゃ。でないと社会に出たとき苦労するって。

「では、こちらのお嬢さんには私の花嫁になって頂きましょう」
「はーい。私は駄目ですか? あなたの趣味には合いませんか?」
「もちろん来て下さるというのなら歓迎いたしますよ。真なる愛より遣わされし姫君?」
「この紋章に恥じない愛を教えて差し上げますよ、ミスター・ネクロード?」

待てとか何考えてるんだとか言うたちは知りません。放置です。
だって今はそれより目の前の行いを正す方が先決ですから。
というわけで、ネクロードさんのお宅拝見にレッツゴー!





ゆとり教育見直し制度





連れてこられたのは古びたお城。つーか古すぎ! マイナス30点!
「ネクロードさん、レディを招待するのにこれじゃいけませんよ。今時の女性は綺麗・快適・ゴージャズの三つが揃ってないと不満を抱くものなんですから」
まぁそれは裕福に慣れすぎているっていう意見もあるけどね。でもやっぱり無いよりはある方がいいでしょう、何事も。
「おや、それは失礼。愛の姫君が来て下さると判っていれば、もう少しましな部屋を用意したのですけれどね」
「備えあれば憂いなしってやつですか。じゃあちょっと変えさせて頂いてもいいですか? たちが来るまではこの部屋で過ごさなくちゃいけませんし、なら少しでも居心地のいい空間にしたいですから」
「ええ、それで貴女方が逃げないでいて下さるのならどうぞお好きに」
了解を得たので、とりあえず杖を振るってみる。石張りだった天井と壁を白きらきらに張り替えて、割れてた窓は元通り&レースでお姫様カーテンを装着。
うわ、家具なんか全部古すぎるし。アンティークとかいうレベルじゃないよ。
とりあえず椅子と机をリニューアルして、床には絨毯を敷き詰めておくか。
「テンガアールちゃんは何かほしいものとかある?」
「えっ!? ぼ、僕は別に・・・・・・」
「そっか。もしあったらいつでも言ってね」
にっこりと笑顔で話しかけると、今にも泣きそうだったテンガアールちゃんも少しだけ笑ってくれた。
うんうん、やっぱり可愛い子は笑顔でないとね! それでこそ力を尽くす甲斐もあるってもの!
「さて、ネクロードさん」
「何でしょう、愛の姫君?」
にやりと笑みを返されると、私の隣にいたテンガアールちゃんが少しだけ震えた。
でもキッとネクロードさんを睨みつけるところに気の強さを感じる。いいね、好みだよテンガアールちゃん!
そんな彼女を背中に庇いつつ、私はとりあえず言いつけた。

「ちょっとそこに座りなさい」



「だからですねぇ。そんな何人も無計画にさらったら悪名轟くに決まってるじゃないですか。もっと一人一人をまともな手段で落としていけば、こうやって誰かが倒しに来るのを迎え撃ったりしなくても済むんですよ」
「しかし愛の姫君。女性は何故か皆、私を嫌がりましてね。そうなってしまえば無理やりにさらうしかないでしょう?」
「ですからそこらへんはネクロードさんの腕の見せ所ですって。さっきも言ったでしょう? 女の人は綺麗・快適・ゴージャスに弱いんだって。他にも美味しいものに弱かったり金や権力に弱かったりするんですから、相手によって作戦を変えていかないと。男の人ならば女性に対してそれくらいの労力は費やすべきですよ。むしろそうしたときほど後で女性が自分のものになったときの喜びが得られるじゃないですか」
「なるほど・・・確かにそれは貴女の言うとおりですね」
「でしょう? ネクロードさんには力があるんですから、後はちょっと手を尽くせばいいだけですよ。例えばこの城を綺麗にリフォームして晩餐会を開くとか。それだけで女性っていうのは意外に寄ってきてくれたりするものですし、それに世界がこれだけ広いんですから嫌がらずにネクロードさんに血を分けてくれる人だって結構いると思いますよ? まずは言葉でお願い、次に物で釣るという手段でコミュニケーションを試みましょう?」
「物、というと女性が好みそうなのは・・・・・・宝石の類でしょうか?」
「そうですね、ゴージャス系お姉様やギャル系少女はそれで落とせるかもしれません。後は場面に応じて相手の欲しいものを買ってあげるとか、一日すべて奢りで裕福な生活をさせてあげるとか。相手の望んでいることを叶えてあげれば、たいていの人は快い気持ちになりますから、後はもうネクロードさんの望みを果たすだけ」
「素敵ですねぇ。さすが愛の姫君。あなたの言うとおりにすれば世界中の女性が手に入りそうですよ」
「あのー・・・・・・」
「あ、でも嫌がる女性を無理やりっていうのは止めてくださいね。ほら、私も一応愛の使者ですし、その場合はもちろん女性の味方ですからネクロードさんを倒さなくちゃならなくなりますし」
「私も貴女のお相手は大変でしょうから、ご忠告に従ってまずは女性を研究することから始めましょうか」
「あのー」
「その人に合った好み、そして傾向。女性は雰囲気を大切にしながらもリアリストな人が多いですから、そこらへんもちゃんと抑えてくださいね。大丈夫ですって、ネクロードさんはこんなに大きなお屋敷を持ってるんですから。ちょっと学べばすぐに紳士になれますって」
「そうですかねぇ。貴女のような女性に褒めて頂けるとは光栄ですよ」
「あのー!」
「「は?」」
声に振り向けば、いつの間にかたちがいた。
え? あれ? もうそんなに時間が経ったっけ? 確かネクロードさんに女性の扱いについてお説教を始めて、テンガアールちゃんがお菓子を作ってくれたから三人でお茶をして、でもってその後も話し続けて、眠くなったテンガアールちゃんのために天蓋つきベッドを出して、すやすやと眠るテンガアールちゃんを起こさないようにひそひそと対話を続けて、寝ずの説得でついにネクロードさんも女性の神秘について理解し始めてきたところだったような。
うん、そうだよね。だってそこのベッドでまだテンガアールちゃんが可愛い笑顔でいい夢見てるわけだし。
「あの、僕たちもちょっと先を急がなきゃなんで、さっさと戦ってもらえませんか?」
棍を持ったが、何だかずいぶんと爽やかな笑顔で言ってくる。
その後ろではルックとフリックさんが、ずいぶんと疲れた様子で肩を落としていて。
ビクトールさんと喋る剣さんなんかは、ずいぶんとやる気みたいだし。
え、ちょっと待ってプリーズ? 私まだ、ネクロードさんに女性の素晴らしさについて説き終わってないんだけど。半分もいってないのにもうタイムリミットなんですか?
、あと100時間くらい待ってくれない?」
「もちろん却下」
笑顔なくせに問答無用なの言葉によって、戦闘は開始されてしまった。
あぁもう! こんな短時間で女性を語りつくせるわけないって! ネクロードさんごめんね、来世で頑張って下さいね!
願わくば生まれ変わったあなたが私の言葉を忘れませんように!





2005年7月8日