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私がこの世界に落ちてきて、一番最初に出会ったのはヒッキーだ。
オリーブの髪にすらりとした身体。いまいち何を見てるんだか分からない目で周囲を見回すと、無言でその場を制圧できる人。
ホグワーツなら間違いなくスリザリン、しかも帝王ヴォル様や運が悪ければサラザール・スリザリンに分類される系。
秩序を乱す私が何とかかんとかで問答無用に攻撃されたりもしたけれど、美少年だからよしとしよう。
・・・・・・そう、ヒッキーは美少年だ。繊細な造りが美しい、美少年から美青年になりかけの成長期美形。
この世界に来て本当に感謝したよ・・・! 世界は広いね! 万々歳だね! 美形万歳、美少年カモン!
まぁ、年齢の割りに変な雰囲気をまとってるし、スリザリントップ傾向だし、実は結構侮れないと思ってたりするんだけど、その顔だけで全部許そう。今のところ私には実害もないし。
そんなヒッキーは、紆余曲折の末に私にこの世界のことをいろいろと教えてくれた。ちなみに私も私の世界のことを教えてあげた。
のんびりと森の中で知識を深めることしばし。隣にヒッキーが居続けること同日。
・・・・・・ヒッキー、神官長の仕事はしなくてもいいのか?
まじかるぷりんせす、ほーりーあっぷ!
「今日はおまえに紋章をつける」
『つけようと思う』じゃなくて『つける』っていう一方的決定事項を平然と述べるところにヒッキーのスリザリン具合がよく現れていると思う。
でもいいや、美少年だから。それにしても私、ヒッキー系の顔がかなり好みだったんだなぁ。
我ながら大発見だよ。ノーベル賞も貰っちゃうよ。
「おはよう、ヒッキー。紋章ってアレ? ヒッキーが頑張って謀略駆使して集めてるやつ?」
「そうだ。異界から来たおまえの居場所を特定することは出来ない。かといって場所を決めてテレポートするのは面倒だ。紋章をつけていれば簡単に見つけることが出来る」
「でもヒッキーのコレクションなんでしょ? そんな大事なのを私にくれちゃっていいの?」
「必要になれば返してもらう」
「レンタル料はおいくら? まさかトイチだなんて言わないよね?」
「トイチ? 何だ、それは」
「十日で一割の利子がつく、かなりあくどい金融投資のこと。でもヒッキーはそんなことしないよね。大帝国らしいハルモニアの神官長様だもんね?」
笑顔で言ってみたら、ヒッキーは本気で金に興味がないらしく、綺麗な顔をそのままで流して下さった。
うわぁ、金と権力がくっついた美形だよ。初めてだよ、ここまで揃った人物は。これでサラザール・スリザリン系統でさえなかったら一生近くで見物してても良かったのに!
うん、でもまぁ時が来れば私は元の世界に帰るだろうけどね。でないとレイがうるさいよ。第二のヴォル様とかになられたら困るし。
「それで? 何の紋章をくれるの?」
尋ねると、ヒッキーは持っていた皮袋の中からボールみたいな物体をごろごろと取り出した。
これはまさか紋章の持ち運び形態の紋章球? おいおい、そんな大切で物騒なものを持ち歩いたりしないでよ。さすがヒッキー、ヒエラルキーのトップ君臨。
「とりあえず、ハルモニアにある真の紋章を全部持ってきた」
全部かよ、オイ。あー・・・・・・ヒッキーの部下の人たちって苦労してそうだなぁ・・・・・・。
「真なる眠りの紋章、真なる闇の紋章、真なる太陽の紋章、真なるからくりの紋章、真なる愛の紋章。望むのならば真なる土の紋章も持ってくるが」
「真なる愛の紋章以外でお願いします」
「ならば真なる愛の紋章で決まりだな」
「人の話は聞こうよ、ヒッキー」
「おまえには似合いだ、アキノ」
「皮肉にも程があるし。つーか勝手につけるな! セクハラで訴えるよ?」
「おまえは右手で杖を持つから、紋章は左につけておく。額にも宿せるだろうが今はまだ空けておけ。いずれおまえに最も相応しい紋章が手に入ったときは、その場所につけてやる」
ヒッキーはそう言いながら勝手に私の左手に紋章をつけてくれやがった。
この世界に27しかないらしい真の紋章の一つをもらえたのは嬉しいけど、でもそれが真なる愛の紋章?
何その恥ずかしいネーミング! 愛と勇気と希望なんて特撮ヒーローに似合っても私には似合わないって! むしろその真逆を行く敵役キャラなはずなのに!
「ねぇ、ヒッキー。この紋章って何が出来るの?」
ご丁寧に紋章を隠すための手袋をはめてくれているヒッキーに尋ねると、彼はやはり美少年な顔でさらりと答えた。
「破局寸前のカップルに愛を再び灯すことが出来る」
「・・・・・・ヒッキー、実はこの紋章の扱いに困ってたんだね」
それを私に押し付けるせめてもの謝罪として、手袋が何だかやたらに素材の良い高級品なのか?
とりあえずこの世界での私は、愛を探す人に優しいキューピッドになりそうだ。
柄じゃないよ・・・・・・!
2005年6月12日