。おまえは死神の存在を信じるか?」
「死神の定義にもよるけれど、『死を司る神』が死神なら、それは信じてないよ」
っていうか神様の存在自体を信じてないんだけどね。だって無宗教の身ですから。
自分にとっての絶対的存在は自分で決めた方が納得いくし。なので神様は信じてません。
つーか、どうしたの。
「珍しいね、不破がそういったこと聞いてくるなんて」
科学的に証明できないものは一切信じない主義じゃなかったっけ? マグル出身で魔法使いになった今でも尚。
そんなことを考えていたら、不破は私の目の前の席に腰を下ろして言った。
「・・・・・・・・・聞いてほしいことがある」
いいでしょう、聞きましょう。
聞くだけならタダだしね。友人の誼で相談料もロハでいいよ?





アルバイター魔女っ子(DEATH NOTE編)





不破の話を要約すると、こんな感じだったと思う。
「ちょっと前にアルバイトで呼び出されていったら、その依頼人がお茶に誘ってくれた」
不破は頷く。
「そうしたら、その依頼人は『自分は死神と繋がりのあるデスノートというものを持っていて、いつでも誰でも殺せるんだ』と言った」
不破は頷く。
「使用方法は、殺したい相手の名前をノートに書くだけ。でも顔を知らないと効き目はない」
不破は頷く。
「で、不破はその依頼人のことを春の陽気に当てられたウフフな人だと判断した」
不破は首を傾げる。
「だけど口には出さずに、依頼人の願いである限定100個のブランド腕時計予約券を手に入れて、相手に渡して帰ってきた―――と」
不破は頷く。
「でも話はそれで終わらずに、ついさっきまた呼び出されていったら、相手はそのときと同じ依頼人だった」
不破は頷く。
「だけど依頼人は死神のことなんかアッサリサッパリ忘れているらしく、『デスノート』の存在さえも何ソレ状態だったので、不破は怪しく思った」
不破は頷く。
「演技をしている様子はない。ならば本当に忘れているのかもしれない。ウフフが理由にしても、あまりにも不信さがなかったので逆に不破は考えた」
不破は頷く。
「『もしかしたら死神は本当に存在していて、それが依頼人から記憶を奪ったのではないか』―――と」
不破は頷く。
「で、私に相談して今に至る」
不破は頷く。
現状把握は終わった。何かいろいろツッコミ入れたい気もするけど、それはこれから入れるとして。
はてさてふむー状態になる前に、とりあえずこれだけは聞いておかねば。今後の指針として。
「それで不破は何をどう考察したいの?」
「死神が現実に存在するのならばその証明。ならびに『デスノート』とやらの構造把握だ」
「ラジャー。私でよければ付き合いましょう」
宿題も終わってるし、図書館から借りてる本もないし、大広間でお菓子を食べながらでいいのなら夕飯まではいくらでも。
興味深い話題だし、不破と考察するのは好きだからね。



えーと、とりあえず依頼人じゃ字数も多いから名前を聞いておこう。
「その依頼人、名前は?」
「ミサミサだ」
「へぇ、可愛いね」
ミサミサって素で言えちゃう不破が。これが三上さんや郭君や真田君だったら間違っても言わないよ。
渋沢さんや須釜さんや佐藤さんなら普通にさらりと言えちゃうだろうけど、アレは違う。別種の生き物。
あぁ、こんなところにまで性格の端々が垣間見えるよ・・・。
「ミサミサさんって女の人?」
「年齢から言えば十代だと思われる女だ。確か雑誌のモデルをしていると言っていた」
「うっわ、じゃあ可愛いんだ? いいなぁ、不破。私も女の子に呼び出されたいなぁ」
アルバイトでは何でか男性に呼び出される確率が高いんだよね。まぁ相手が美形ならいいんだけどさ。
だけどやっぱり可愛い女の子がいいと望むのは当然の意見だったりすると思うんだよ。一美少女スキーとしては。
「ミサミサが言うには、死神とやらは『デスノート』というものを持っていて、それを拾った人間は先に言ったとおりノートに名前を書くだけで他人を殺すことが出来るらしい」
「へぇ、便利なものだねぇ。普通に考えれば闇の魔法属性だ」
「元は普通のノートだということは、製造者が魔法使いの場合、かなりマグルに精通した人物だということが考えられる。羊皮紙では怪しまれるのがオチだが、ノートならば誰もが訝しがることなく手にし、何かしらを書き込むだろうからな」
「製造者を魔法使いと仮定した場合、ノートにかけたのは『許されざる呪文』? 後は拷問呪文とか消去魔法の応用編?」
「名を書く際に死亡理由を添えれば、その通りに死ぬらしい」
「じゃあ支配魔法か蓄殺魔法だ。うっわ、闇色真っ黒。トランスモグリフィアン呪縛も捨てがたいけど、あれじゃすぐには殺せないしね」
「まず、ノートを用意する。魔法の発動条件は、殺したい相手の名前を記入。この場合だと、まずその書かれた名前の相手の探し出し、把握しなくてはならない」
「アッシオで同じ姓名を持つ者を召還する? だけど顔を知ってなくちゃ殺せないんだよね?」
「そうだ。だがノートに魔法をかけているだけでは、書き込み主が目標人物の顔を知っているかどうかを判断できない。ましてや目標の顔を調べることなど不可能だ」
「うーん、いっそのこと呪いにしちゃう? ペンを持って書き込んでいる際はノートに支配されるような。服従呪文の応用で」
「・・・・・・なるほど。そうすれば瞬間的に書き込み主を操ることが可能だな」
不破がこくこくと頷く。あーそれにしてもスイートポテトが美味しい。うまうま。
秋っていうのはいいよねぇ。食べ物は美味しいし、服も夏服と冬服と両方着れるし。食欲と読書に最適だし。
うん、夕食が終わったら図書館に行って、また新しい本を借りることにしよう。
「では服従呪文で書き込み主が目標の顔を知っているか判断するとして、目標自体への発動はどうする?」
「地球の反対側にいても殺せるような、強力なものかぁ。作り手の力量に左右されそうだねぇ」
「殺害するにしても、書き込み内容によって方法は常に変わる。それも作り手の手腕によるだろう」
「闇の魔法どっぷりビシャビシャ。ヴォル様もびっくりの性能じゃない?」
「確かに。これさえあればマグルに限らず世界中の人間を殺害することが可能だからな」
「ってことは、このノートを作ったのはヴォル様じゃないってことだよね? あの人なら作ったら即行で使いそうだし、それ以前に作って放置なんて無駄なことはしなさそうだし」
つーか日記を作ったくらいだから、作れるかもしれないけどさ。だけど彼はオートじゃなく手動で支配することを選んだんだろう。
確かにそっちの方が達成したときに充実感はあるだろうけどね。それにしても嫌な充実感だな、オイ。
あ、それとも別方向のアプローチでマグルはマグルに滅ぼさせる計画なのかも? うわ、さすがヴォル様様。
「では『デスノート』を作ったのは一体誰だ? それにそれ程の性能を持ったノートを何故他人に譲る。やはり愉快犯か・・・?」
「魔法省特許許可局に出せば一生遊んで暮らせそうなのにねぇ。まぁそれ以前に許可なんて出されないだろうし、ヴォル様陣営に目をつけられて拉致されそうだけどさ」
「まさ本当に死神が実在するのか? だが、それでは死神は魔法使い―――それもかなり力量のある者と同等の力を持っているということになる。だとすると地球上にはマグルと魔法使い、そして死神という三種の生物が・・・・・・」
「不破、死神が神だという可能性を忘れてるよ」
つけたしてあげたら、不破は無表情な顔をさらにムーッとさせた。
不破の考察が苦手な人は結構いるらしいけど(水野君とか、鳴海君とか、郭君とか)、私はそんなことないと思う。っていうか聞いてて楽しい。
理路整然と考えるくせにどこか抜けてるんだよね。可愛い可愛い可愛すぎる。
魔法使いだと判明するまでは「天才」って言われてたらしいし、確かにいろいろなことが出来るけど、不破の魅力はそんなものじゃない。
この考察があってこその不破大地。そう、これでこその不破!
ブツブツ呟いている不破を見ながら紅茶を飲む。あぁ、なんて優雅な午後。



まぁでもこのまま話をしていても埒が明かないので、死神は存在するという方向で話を進めよう。
その上で捕獲方法を検討。捕まえた際には学会へ発表。その上でスポンサーを得て生態を解明。
出来れば日本語が通じる死神だといいなぁ。もしくは英語。
決して死神語なんてものはありませんように。



「死神を捕獲するには、おそらく『デスノート』を手に入れるのが一番だろう」
不破が言う。うん、私もそう思うよ。死神=デスノート。その公式が正しいことを前提にして次へゴーゴー。
「だがミサミサを見る限り、『デスノート』を所持していてもノートが別の人物に渡った場合、すべての記憶を消される可能性がある」
「忘却呪文だね。もしくは消去魔法」
「なので持ち主を特定していくことは不可能に近い。ならばどうする?」
「不可思議な死を迎えた人間を探して、ミッシングリングを解明していく。愉快犯だったりすると困るねぇ。この際だからノートで検索かけようか? 普通じゃないものは全部チェック入れてくとか」
「その方が効率的だな。後は人外のものを見ることの出来る道具を発明するか」
「占い学で予知でもしてみる? タイム・ターナーで殺害時刻まで戻って全人類調べて回るのもいいけど、時間まで指定されてちゃ面倒だし」
「ノートで探した方がいいだろう。おそらく紙も普通のものではないはずだ。それならば我々魔法使いなら識別できるかもしれない」
不破はそう言うけど、果たして全世界にノートがいくつあるのか考えるだけで嫌になる。
だったらやっぱりミサミサさんから当たってった方がいいのかもしれないなぁ。
ノートは一応物質なのであって見えなくなることはないのだから、ミサミサさんの元から移動する際には絶対に目撃されてると思うし。
意外と本人は覚えてなくても周囲の人は覚えてたりするしね。とりあえずミサミサさんの家族からチェック入るか。
死神が見えたらいいんだけど、あぁいうのは見えないって言うのが相場だからねぇ。
ルキアさんしかり、日番谷君しかり、ギンさんしかり。
幽霊と近いものなのかなぁ。リドるんみたいな―――・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「ねぇ、不破」
呼んでみたら、やっぱりムーッと考え込んでいた不破が顔を上げる。
何だか無表情だけど難しそうな顔をしてるから、ケーキを一口分フォークに指して口元へ持っていった。
目を瞬かせて少し考えてから口を開け、パクリと食べる様子はまるで雛鳥にしか見えない。不破、雛鳥。私、親鳥?
不破の親か・・・・・・。「親の顔が見てみたい」なんて言われたらどうしよう。出て行って納得させられるか否か。
あぁでも不破みたいな子供ならほしいかも。養子にもらうか。不破をもらうか?
「不破は死神を見つけたらどうするの?」
私は学会に発表して金を得るけど。あぁでも死神にも人権ってものはありそうだからなぁ。
じゃあ交渉して友情を築き、金よりも有益なものをもたらして貰おう。とりあえず今現在殺したい人はいないけどさ。
未来的にどうなるのか判らないし。まぁどうしても殺したい人が出来たら、誰の手でもない自分の手で殺すつもりだけど。
・・・・・・って私ってば物騒だなぁ。もっと明るく前向きポジティブに生きねば。うむ。
「別にどうもしない」
「どうもしない?」
「存在さえ科学的に証明できればそれでいい」
なるほど。不破辞書に死神という項目が正式に追加できればいいわけか。
それを考えると不破は私なんかよりも善良で常識人なことがよく判る。
やっぱ私が不破の親になるのは無理かも。うん。
?」
「いやいや、ちょっと死神を捕獲する方法を考えてました」
「ふむ。それで妙案は浮かんだか?」
「うん、とりあえず」
記憶思念体リドるんの人外(と書いて同類と読む)探知モードを駆使すれば見つかるんじゃないかなぁ。
――――――と、言おうと思ったのに。





「よっばれて・とっびでて・パンプリーン♪」
どんなに急な召還直後でも、明るく営業スマイルばっちりで口上を述べる私は立派なアルバイターの鑑だと思う。
ごめんね不破、とりあえず死神談義は少しの間お預けだ。
そんなことを考えながら、私は目の前にいる三人の方々に向かって笑みを浮かべた。



モデルさんみたいに可愛らしくて軽いゴスロリチックな服が良く似合うお嬢さんと。
すらりと背が高くて何だかいい感じの女性に人気のありそうなお兄さんと。
大きな目の下にクマがあって猫背でどことなく小動物っぽいお兄さん。
この三人のうち、誰が今回の依頼人なんだろう。



っていうか二人のお兄さん。手錠で繋がれてるのは、そういう趣味だと思っていいんですよね?





2004年11月8日