Bクラスのチーム『SONICA』と、ちゃん率いる『スリザリン』のパーツ・ウォウの日。
待ち合わせ場所になってる最初に出会ったビルの屋上に行くと、ちゃんはいなかった。
代わりにいたのは、三人の男の子に一人の女の子。クロト君とシャニ君は判るけど、後の二人は初めて見る。
くすんだ金髪の背の高い男の子が、私に気づいて腰を上げた。
「あんたが『渡り鳥のシムカ』か?」
「うん。もしかしてちゃんのチームメイト?」
「あぁ。今日はあいつが来れなくなったから、代わりに俺たちが来た」
男の子はオルガと名乗った。もう一人、月を見上げて楽しそうに笑っている女の子は、ステラ。二人とも『スリザリン』のチームウェアの通り、エア・トレック以外真っ黒の服をまとってる。
ちゃん、何かあったの?」
聞いたらオルガ君はこめかみを指で掻いて、何だかつまらなさそうに教えてくれた。
「出かけに零に捕まったんだよ」
「零?」
初めて聞く名前に首を傾げたら、オルガ君はいまいましげに舌打ちして。

が無条件でわがままを聞く、唯一の相手だ」





12.渡り鳥、ジェラシーを覚える





『イッェーイ! ついに始まるぜ、互いのエンブレムを賭けた運命の勝負! 「SONICA」と「スリザリン」の一騎撃ちだ!』
わーっと会場が盛り上がる。BクラスとCクラスのバトルにしては、すごいギャラリーの入りよう。ネットでも放送してるみたいだし、これで一気に『スリザリン』も全国デビューだね。
でも残念だなぁ・・・・・・せっかくのこの盛り上がりの中、アイドルになるはずのちゃんがいないなんて。
「あれ? 『月下の魔女』がいないようだけれど」
会場で合流したスピ君と鵺君も不思議がってる。あーあぁ、私もホント残念。
ちゃんは捕まっちゃって来れないんだって」
「捕まったって、誰に?」
「零君っていう、ちゃんにとって特別な子」
鵺君の表情が険しくなったけど、私もそれは同じ。だってちゃん、彼氏いないって言ってたのに。零君って誰? 今度会ったら絶対に問いたださなきゃ。
『今回のパーツ・ウォウの勝負方法は「ディスク」だ! 5対5で一枚のディスクを奪い合い、多くゴールできたチームの勝ち! なのにどうしたぁ!? 四人しかいねぇぞ、チーム「スリザリン」! 華麗なトリックで名高い「月下の魔女」がいねぇじゃねぇか! あの可愛い彼女を見に来た俺らをどうしてくれんだこの野郎っ!』
「可愛い彼女だって、鵺君」
「何で俺に振んだよ」
「ライバルが多くて大変そうだけど、頑張りなよ」
「だから何でっ」
スピ君と鵺君がじゃれあってるうちに、オルガ君が『SONICA』のリーダーと握手を交わしてる。
声は・・・・・・マイクをつけてるみたいで、会場全体に聞こえてきた。
『おい、「月下の魔女」はどうした』
『あいつは今日は来ねぇ。俺たちは四人だが、そっちは五人でいいぜ』
『あぁ? 自信過剰も大概にしろよ』
『あんたらに先に言っておく。俺たちは妨害する威力が半端じゃねぇ』
オルガ君の後ろで、シャニ君はぼんやりと眠そうに目を閉じている。
『死にたくなけりゃ本気で逃げろ。それかさっさとギブアップしろ。忠告はしたぜ。半殺しになっても文句は聞かねぇからな』
クロト君が笑って、ステラちゃんはふるふるっと頭を振った。
ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳は、狂気の色で輝いていた。





さぁ、登場です。
2006年7月10日