スクリーンの中で向かい合うちゃんと宇童君。
ちゃんが魔女っ子ってことを知った宇童君は、自分のレガリアまで賭けてしまった。
それだけ蓮ちゃんのことが大切なんだね・・・・・・。
宇童君の中の獣が唸りをあげる。鋭い牙が、歯を剥いた。





09.渡り鳥、決着を見届ける





宇童君の攻撃をひらりひらりと交わすちゃんは、やっぱりすごい。
スピードはピカイチ。しかも魅せることを忘れない、パフォーマンスみたいな走り。始めて一カ月経ってないなんて思えない。
だけどね、逃げるだけじゃ勝てないよ?
ー! ローリングソバット決めてよー!」
「・・・・・・俺、シャイニングウィザードが見たい・・・」
クロト君と、パンダのままのシャニ君が楽しそうにリクエストしてる。
仲間が全然心配してないってことは、余裕なんだろうな。
やっぱりちゃん、うちのチームに欲しかったなぁ。今からでも入ってくれないかな。クロト君とシャニ君も一緒に。VIP扱いで迎えちゃうのに。
「あのバカ・・・っ!」
鵺君が叫んだ。画面の中では、ちゃんが真っ正面から宇童君の牙を受け止めている。
肋骨を粉砕するほどの威力。食らったら立っていられないそれを受けて、ちゃんは―――笑った。
そして宇童君の足を持ったまま飛び上がり、綺麗なトリックで彼の顔に膝を。

『すいませーん。私、ギブ・アップでーす』

・・・・・・膝を、食らわせずに空中で一回転して、ちゃんはそう宣言した。
もうすっかりマイクの位置が分かってるのか、こっちに向かってひらひらと手を振って。
あ、後ろで宇童君が呆然としてるよ。それはこっちの私たちも同じだけど。
クロト君が当然のことのように笑ってる。
「こうなると思った。あんな賭けしてが勝とうとするわけないじゃん」
あぁ、やっぱりちゃんは優しい。うん、やっぱり私、ちゃんのこと大好きだよ。



結局は二勝一敗で、予定通り『ベヒーモス』が負けた。
でも宇童君は複雑そうな顔してるし、坂東君はリベンジしたそうだし、ゴーゴン・シェルは傷は治ってるけどまだ目覚めてない。
左君と風明君はともかく、対するちゃんはオレンジウサギとメロンパンダを肩に乗せて満足そうに笑ってる。
「今日はどうもありがとうございました」
ちゃんが頭を下げると、みんなの顔がますます不服そうになった。うん、気分は判るよ。
「じゃあ宇童さん、お約束通り蓮さんを診させて頂きますので、案内して頂けますか?」
「・・・・・・あぁ」
「それと美少年か美少女をご紹介して下さる約束、忘れないで下さいね? シムカちゃんや鵺君クラスじゃないと認めませんから」
「分かってる。ちゃんと紹介するよ」
ふっと呆れたように宇童君が笑った。彼のこういう表情を見たのは初めてかもしれない。
優しい顔。たぶんきっと、宇童君はこういう子なんだろうな。
ただ今はそれを押し止めてでも守りたいものがあるだけで。

とにかくこれで、ちゃん率いる『スリザリン』は三連勝してCクラスに上がった。
私、ちゃんの大ファンだもの。これからもたくさん魅せてね、ちゃん!





蓮ちゃんの足は長期計画で生やすらしいです。
2006年6月7日