13:テーブルゲーム
ハートのエース。ハートのエース。・・・・・・・・・やった!
「ハーイ、私あがりー」
「げっ! またが一番乗り!?」
「強いんだな、って」
光宏が大袈裟に顔をしかめて、健太郎が苦笑する。
すべての文句はハートのエースを寄越してくれた神様にどうぞ。
夕飯もすんで、私たちレイブンクローの一年生は談話室に集まってゲームをしていた。
ちなみに今はババ抜き中。戦績は私が3勝、多紀が1勝。
トランプに限らずゲーム系って得意なんだよね。特に賭けたりしたら絶対に負けないし。
負ける勝負は最初から受けない主義だし?
「楽しんでるとこ悪いけど、、お客さん」
「はーい」
秋さん(門番の深山木秋さんのこと)に呼ばれて、近くにおいてあった洗面道具を持って立ち上がる。
有希と麻衣子と一緒にお風呂に行く約束をしてたんだよね。
「なんだよ、の勝ち逃げか」
「戻ってきたらまたやろうね、ちゃん」
・・・・・・・・・柾輝はいいとして。何だかんだ言って負けてるのを根に持ってるでしょ、多紀。
だって目がうっすらと開いてるからさ。
逃げちゃおーっと。
一言で言えば想像を絶する広さとでもいいますか。
いやさーたしかに談話室や部屋を見たときからそうなのかなーとは思っていたけど、まさかお風呂場までこんなだとはねぇ・・・。
白い壁、立ち上る湯気。・・・・・・何人分のシャワーがあるのさ。
壁には獅子と穴熊、鷲と蛇。各寮のシンボルマークが描いてあって。
普通銭湯には富士山でしょ。わびさびがないなぁ。
「二人ともどう? 寮の方は」
湯船につかった有希が尋ねてくる。
広すぎるお風呂に私たち三人だけ。
贅沢なんだか寂しいんだか判断は微妙です。
「楽しいよー。頭のいい人たちばっかりだから話してて面白いし」
「私もですわ。監督生の渋沢さんがよくしてくれてますし」
・・・・・・・・・・・そうっすか。渋沢さんがよくしてくれてるんですか。
午後の図書室でも出来事を思い返す限り、私の中では渋沢さんは『厄介な人』に分類されてるんですけど。
でもまぁ面倒見はよさそうだったし。
危険を察知する能力を磨き上げてもらって下さい。
「そう! ハッフルパフに鳴海って奴いるでしょ!」
なるみ? ナルミ? 成美? 鳴海?
「・・・・・・・・・ゴメン、有希。それ誰?」
お怒りに震える貴女様を遮るのはとても勇気がいるのですが。
「背が高くて茶髪でロンゲの男よ!」
背が高くて茶髪でロンゲ・・・・・・。
あ、あれか。魔法史の授業で寝てた子か。
「あの男、今日私と会った瞬間に『キミ可愛いねー! 俺と付き合わない?』とか言ってきたのよ!」
もう信じらんない! と言って叫ぶ有希の声がお風呂場に木霊する。
信じらんない――しんじらんない―――らんない――――・・・・・・
山びこみたい。これは空気の振動がそうさせる現象なんだけど。
隣では麻衣子がため息をついた。
「鳴海君は私のときもそうでしたわ・・・」
おぉ、鳴海君はナンパ少年なのか。
今度美少女トークとかしてみようかなー。年上のお姉さんと同じ年の女の子とどっちが好きなんだろう。
私はどっちも好きだけど。
「まぁまぁ。ナンパされた数だけ美少女の勲章だと思って」
「何のんきなこと言ってるのよ、! あんただって会ったら絶対言われるわよ!」
いや、それはないでしょう。鳴海君の趣味がおかしいならあるかもしれないけれど。
それにしても怒ってる有希は綺麗だなー。
頬が熱の所為かほんのりと赤く染まってて。
こういうのが見れるときは同性でよかったとしみじみ思っちゃうね。
しかしやはり美少女には笑顔が似合うので。
「そういえばさ、学生要覧に『小島明希人』って先生の名前があったけど、あれって」
「そうっ! 私のお兄ちゃんなの!!」
キラキラキラキラ。あぁ後光が眩しいです。
よし、この話題は当たりだ。
「妖精の魔法の先生でね、クイディッチも上手いんだから!」
・・・・・・・・・クイディッチって何デスか?
とは今の状態の有希に聞けるわけもなく。
「私、今日お見かけしましたわ。飛行訓練の周防先生の補佐でいらしてましたもの。優しそうな方でしたわね」
ふーん。麻衣子がこんな表情をするってことは結構いい人みたい。
明日は妖精の魔法の授業があるし、ちょっと楽しみになってきたかも。
兄上について熱く語る有希を見ながらそんなことを考えたりした。
「クイディッチ?」
手札を3枚取り替えながら翼さんが聞き返した。
多紀は2枚交換? 私も2枚で。
「そっか。はマグル出身だったっけ」
お風呂から出て寮に帰ってきたら、なし崩しにゲームへの参加を義務付けられた。
さっきと違うのはやっているのはポーカーだってことと、メンバーがちょっと変わったこと。
参加者は私と多紀、柾輝に光宏、翼さんに木田さん。
六助と仁吉と健太郎はお風呂に行ってるらしくて、井上さんと畑さんは明日提出らしいレポートを必死にやっている。
あ、ラッキー。ワイルドカード。
「クイディッチっていうのは魔法界でもっとも人気のあるスポーツだよ。1チーム7人でゴールを守るキーパーが1人、ボールを投げ合って相手ゴールを狙うチェイサーが3人、プレーヤーを箒から叩き落そうとするボールを打ち返すビーターが2人、そして金色のスニッチを捕まえるシーカーが1人。一回ゴールするたびに10点だけど、スニッチを捕まえれば150点入るから、そうしたら勝敗は決まったようなものだね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「去年は人数が足りなくて寮とか関係なくやったけど、今年は寮対抗になるんじゃない? 勝てば寮にそれなりの点はもらえるしね」
「ハイ、質問です」
挙手しました、思いっきり。疑問に思っている点が一つ。
「箒って箒ですか?」
ごみとかを掃き除く、あの竹でつくられた掃除用具のことですか?
え、うわ、うそ、マジ?
「箒は箒に決まってるじゃん」
アッサリサッパリ仰られても。
え、でもこれは何か? 組み分け帽子と同じように人間の世界では『箒』と呼ばれ、けれども魔法使いの世界では『箒』と呼べども他の物体の事をさしているのか?
でも結局組み分け帽子も帽子は帽子だったし・・・。
じゃあここも箒は箒ってことで。
うわー本格的に魔法使いの仲間入りだぁ。あはははははー。
それにしても今日図書館で本を借りたことが全く役に立ってないや。
やっぱり『これであなたもプロ級! 素敵無敵呪い百選』とか借りたのが悪かったのかなぁ。
ま、それはいいとして。
「はい、ダイヤのストレートフラッシュ」
ワイルドカードでジャックを補って。
「うわ! マジで強すぎだって!何か細工でもしたんだろー!」
滅多なことを言わない方がよいかと思われますよ、光宏さん。
だって、ねぇ?
「これ配ったの、翼さんだよ?」
「・・・・・・いい度胸してるね、日生」
ニッコリと寮長様は微笑まれて。
二日目の夜はそうして過ぎていった。
2002年10月23日